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maze


身体を繋げたあとのだるさと眠気で全身がひどく重い。
ベッドに突っ伏して起き上がれない自分とは正反対に、隣で上体を起こし本なんて読んでいる人物を半分落ちかかった瞼で見上げる。
「…このまま寝てもいいですか」
「ああ」
返ってくる短い返事。
ほとんど寝ているのと同義の状態だが一応確認はとる。身体の関係はあっても別に恋人でもなんでもないのだから。それでも、今だけは傍にいられる。
「明日もこい」
「……………はい」
そっけない誘い、というよりは命令に近い。相手は上官だし、命令ではなかったとしても自分に断る理由なんてなかった。


セフィロスにはある日突然呼び出されてその場で抱かれた。それからはことあるごとに執務室やプライベートルームに呼び付けられて相手をするようになった。
最初は驚きと恐怖で抵抗もしたけれど、痛みはほとんどなく快感だけを与えられて落ちてしまった。
恋愛感情としてではなかったけれどもともと強く憧れていたし、近い存在になりたいという思いはあったから好きになってしまったのだと自覚するまで時間はかからなかった。だからといって、いつも何も言わずに身体だけを求めてくる相手にそんな気持ちを打ち明けられるはずもなく、身体を重ねる回数だけが増えていった。

「…ぁっ…ぁ、く……っ」
激しく腰を打ちつける動きに翻弄され、髪を振り乱して喘いでしまう。何度も執拗に求められて、まるで自分が愛されているかのような錯覚を覚える。
そんなわけないのに。
気持ちよくはしてくれるけど、何か言葉をもらったわけでもなければ態度も冷たいまま。望みなんか抱きようもない。
「や、ぁっ…ぁぁぁ……っ」
弱いところを立て続けに突き上げられて視界が白くなるような絶頂感に身体を震わせると、それすら許さないというかのように腰を引き寄せられて深いところに熱いほとばしりを叩きつけられる。
「はぁ…っ…ん、んぅ…」
呼吸を整える暇もなく唇を吸われて、この瞬間だけの幸福感に浸る。思いの通い合わない行為なのにどうしてこんなに気持ちいいんだろう。今触れ合っている肌の熱さと普段の冷ややかな態度の差にいつも間違えてしまいそうになる。
間違いなんて、あるはずないのに。

セフィロスが自分みたいな一兵士を相手にするのはたまたま手を出したら具合がよかっただけのこと。特別な理由なんかない。だから自分のこんな気持ちはきっと余計なだけ。
もともと雲の上の存在だった人が自分なんかのものになるはずないとわかってはいるけど苦しい。それでも押し込めている気持ちを表に出してこの関係が終わるよりは、せめて今のままがいい。
欲しい、けれど手に入らない。どんなに想っても言葉にも行動にも出せない自分には矛盾は矛盾のままでしかなくて。
セフィロスの望むままに抱かれて女みたいな声を上げて、朝になれば一人起きて重い身体と寝不足のぼんやりした頭で訓練に出向く。そしてまたここにくる、その繰り返し。
思考は絡み合った糸のようにぐちゃぐちゃなのに、身体がしなければいけないことは単調でひどく単純でその差に笑えてしまう。


もともとは無理矢理奪われた相手をこんなに好きになってしまう自分はどうかしているのだろうか。
いつか解き明かされる希望なんて見出だせないまま。

差し伸べられたい手はそこにあるはずなのに。





END


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あきゅろす。
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