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俺ってば今、恋してます。
普通の人になら、気持ちわるいって思われるような恋だけど。



おもちゃのキャベツ







 今日もいつもの場所にあの人発見。あいかわらずのクールビューティーなおにいさん。商品の前で黙って読書してる。
商品ってのは、ふきんとかサイフとかいろんなモノで、なんて言うんだっけこういう店…あ、そうだ!テキ屋さんっ!道端でいろいろ売ってるアレね!おにいさんはテキ屋の店員なんだってばよ。

とにかく必要以上は喋らないクールな人で、年は俺より2.3こ上くらい。

で、名前は…

「あの!名前なんていうんですか?」

俺は読書中のおにいさんに、思いきってたずねてみた。いつもはこの出店の前を通るとき、俺が一方的に熱い視線を送ってるだけなので、話しかけるのは今日が初めてだ。

「………」

おにいさんは、全部の集中を注いでいた本から視線をあげ、俺を見た。お兄さんの綺麗な黒い瞳と目が合う。俺の心臓は高鳴った。

「あ、の…俺ってばおにいさんの名前…」

「500円」

「え、」

「それ、500円」



突然、名前ではなく値段を言ったおにいさんに固まる俺。それを見たおにいさんは、俺が緊張のあまり、無意識につかんでしまっていた商品を指さしてもう一度呟いた。

「あ、俺ってばこれ買いたいわけじゃなくて…」

俺は慌てて商品をはなす。

「おにいさんの、名前が知りたいんです!」

「…………」

おにいさんは懸命に名前をたずねる俺をぷいっと無視し、また読書を始めた。

……本当にクールだってばよ。名前聞き出し失敗。でも、おにいさんの声が近くで聞けたからいいや。
低くて、少しだけ擦れた声。すっげぇドキドキするってば。

俺は、俺の存在を完全に無視するおにいさんを眺めていた。本当に綺麗だ……。

「おい」

「えっ…!うわ、はい!!」

気が付けば、おにいさんの視線がまた俺に向いていた。

「はいじゃねーよ。何も買わねえならどけ。他の客の邪魔だ」

セクシーな美声で、冷たいお言葉。

「……はい」

俺は素直におにいさんのいるテキ屋から離れた。おにいさんにうっとうしがられたくないし、今日はもう名前はあきらめよう。明日また来ればいいんだし。

「おにいさん、さよなら!」

「………」

俺はぶんぶんと手を振った。だけどやっぱりおにいさんは俺を見もしなけりゃ表情も変えない。あーゆうのを、ポーカーフェイスっていうんだろうな。ますますかっこいいぜテキ屋のおにいさん!









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