狐の墓参り
この村のはずれには、ポツリと小さなお堂が寂しくある。其処は『うずまきの堂』と呼ばれ、古くから化け物が住むと云われてきた。
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「ネジ兄さま、」
ヒナタはパタパタと廊下を走りながら、長い黒髪を揺らすネジの後ろ姿を見つけ、呼び止めた。
振り返ったネジは、微かに微笑みを浮かべる。ヒナタは眉を下げ、控え目な声で本気ですか、と呟いた。
「本気であの、『うずまきの堂』へ?」
「あぁ、それが父上との約束だからな」
ネジは意思の強い瞳をヒナタに向けて、すぐに遠くを見つめた。
『父上との約束』
その意味を知るヒナタは、諦めたように顔を伏せた。不安そうに、眉を寄せて小さく「ご武運を」と胸の前で合掌した。小さくネジは頷くと、歩き出す。
(どうか、ネジ兄さまをお守り下さい……)
ヒナタは尚も、この世で一番の呪術師だったという先祖に祈っていた。