舐め合い
「お前も不敏な女だな」
季節が冬から春になりかけてあたかい休日。サスケ君とナルトに気をつかって一人で休みを過ごしていた私は、偶然に川辺で出会ったネジさんに言われた。
「横恋慕は辛いだろ」
皮肉気に続けられたその言葉は、確かに私に向けられたモノだったけど、ネジさんの目は私に向けられてはなかった。
「別に。ネジさんほどは、辛くも不敏でもないです」
「……そうか」
私が強きでそう言うと、彼はやっとこちらに視線を向ける。その目はひどく儚げだった。
「あいつは、無器用だがお前にも優しくするだろうから…なまじか辛い思いをしてるだろうと思った」
私の隣にネジさんは座る。彼はサスケ君のことをちゃんとわかっている。そして、私のことも。
「そうですね、最初は。でも…もうなれました」
「…強いな。お前は」
ネジさんは眉根を強く寄せ、フッと笑った。その笑みのせいで、何故か無償に泣きたくなった。
この人も、私と同じく叶わぬ恋をしている。
「……女はタフじゃなきゃ、恋なんてできませんよ」
「それは見習いたいな」
「そうして下さい。なにせ、ネジさんはきっとこれからも、私より何倍も辛いめに合うでしょうから」
だって、相手はあのナルトなんだから。サスケ君から奪うどころか、想いを伝えるのだって一筋縄じゃいかない。
私はいたずらに笑って、立ち上がった。余裕そうにしてはいるが、私の立場はネジさんと何らかわらない。
ネジさんは私の笑顔を見て、愉快そうに言った。
「覚悟は出来てるよ」
私たちは、叶わぬ恋をしている。
end