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常識的なエゴイズム



 好きな人には優しくしたいし、優しくもされたい。それはべつに自分だけが特別エゴイストだというわけじゃなく、思春期の人間ならあたりまえに抱く感情なんだと最近読んだ本に書いてあった。

「思春期なら当たり前…か」

そんなことを思い出してはそう呟いた色白な少年、サイ。彼は、ナルトと触れ合うようになってから、誰もがおどろくくらいの早さで人間らしくなってきている。
なかでも、1番の変化と言えるのは“笑顔”だろう。前のような、つくられた偽物の笑みではなく心から楽しいのだとうかがえる笑みをみせる今のサイ。

「サイ。俺ってばお前の笑う顔嫌いじゃねえってばよ」

以前、ナルトに言われた言葉。サイの中では嫌いじゃない=好き、という計算が成り立つのだが、ナルトの中では定かじゃない。もしかしたら嫌いじゃないという項目があるのなら好きじゃないという項目もあるのかもしれない。そうだとすれば自分は確実にそこに当てはまるのだろう、とサイは苦笑した。

しばらくして、退屈しのぎにサイはナルトの中でみごと「好き」にランクづけされている人物を考えだした。

(まずは、サクラとカカシ隊長。それから火影様に…自来也様もかな。あとは……)

頭に浮かぶ、ナルトとは正反対な男の姿。

(……うちはサスケも、か)

考えてみると、そのあまりの皮肉さにサイはだんだんと笑えてきた。自分は里や仲間を裏切った人間にも劣るのか、と。

「ナルトは、うちはサスケに優しくされたかったんだろうな……」

先ほどと同じく、本の内容を思い出して呟くサイ。その声はどこか切なげだった。






やがてサイは、考えるのをやめた。これ以上悩むのはよそう。どうせ明日になれば任務が始まって、今日以上にナルトのことを考えるはめになるのだ。
あの笑顔とか声とかを、独り占めしたいなんていう欲求とも闘わなきゃいけない。


だから今日は、絵でも描いてやりすごすことにした。













だから明日は、いつものようにナルトに優しくしたいと思った。











end




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