故事生語
俺は、また幾年哀しい夢をみる。
お前を護れる力が欲しくて、悪魔に身を委ねた。
矛盾だと、大蛇は笑った。
「護りたい者を傷付けて、力を得たと喜ぶの?矛盾だわね」
蛇足だと、兄も笑った。
「闇を倒すべき者が、また闇に力を求めるなど、蛇足だとは思わんか」
薄気味悪い、漂白の笑みの中で、お前の笑顔だけが特別だった。
「俺ってば、お前を兄弟みたいに…友達だって思ってる」
光だと、思った。光を護るのに必要なのは、闇じゃない。そう思ったら…愛しくなった。嗚呼、お前の笑顔は美しい。闇に居ても、お前を思うよ。
大蛇は俺に言った。
「蛇に足は無いわ」
兄も俺に言った。
「盾は身を護り、矛は相手を貫く。貫くべき相手を間違えるな」
やっとわかった。
俺は間違いを犯した。今はただ、祈る。愛しいあの子の胸の中にまだ、俺が存在していますようにと……
end