なごり雪
「おぉっ!!」
冬も終りかけの寒い日、道をテクテク歩いていたナルトが突如、目を見開いて叫んだ。
「サクラちゃんっ見て 見て!!雪だってばよ!」
「え?」
はしゃぐナルトに名を呼ばれ、サクラも空を見上げた。そこにはナルトの言うとうり、宙を舞う真っ白な雪の姿があった。
「あっ、ホント」
「もうすぐ春なのに…空ってばバカだってばよ」
ナルトは、さも愉快そうに笑う。サクラは愛情たっぷりの溜息を吐いた。
「バカはアンタでしょ。こういう雪のことを、なごり雪って言うのよ」
「へ?なごり雪?」
案の定、ポカンとするナルト。サクラはクスりと笑った。
「そっ!この冬にふりきらなかった雪が、最後にまるでなごり惜しむように降りだすの。だからなごり雪」
「へぇ、そうなのか」
さすがサクラちゃん、と感心しながら、ナルトは再び空を仰いだ。サクラは静かに、されどナルトに届くように呟く。
「空は乙女のように繊細なのよ」
それは、
乙女と言うより
アンタみたい…
end