紫陽花
俺は、
凄く邪な感情を
お前に抱いた。
その感情を、
愛と呼ぶなら――――…
この世に、
愛だけが絶望する。
□ □ □
「雨、止んだのかってばよ?」
お前は、紫陽花の華を持って俺の前に立った。その言動が、ホントどうにも可笑しくて、俺は微笑む。
「雨、なんて。降ってなかったじゃないか、元から…」
そう。今日は快晴、満天の空。雨なんて、祈ったって降るわけがない。
「降ってないの?」
「あぁ。降ってない」
俺の言葉を、お前はさも意外そうに聞いている。
「じゃあ、変だってばよ」
「?」
「これじゃ、つじつまが合わない」
「…何の話しだ?」
「これ、」
お前は、紫陽花の華を俺に見せた。
「紫陽花って、雨の日に咲くんでしょ。だから、今日は雨が降ってなくちゃ可笑しいんだってばよ」
成程、一理ある。でも、莫迦な考えだとも思う。
「ナルト、お前は……常識と現実、どっちを見つめるんだ?」
純粋なお前に、皮肉込めて囁いた。お前は一瞬だけ迷って、それからニコリと笑んだ。
「現実」