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桜を見に行こうと言った。雪景色に咲く桜。何時ということもなければ、そう固執するような機会でもない。果たされないのが当然の、他愛もない口約束。そんなささやかな日常を、どうして此の期に思い出すのか。


指のひとつでさえ自由にならないくせして、もう意味のなくなって仕舞った肺がくるしいのは何故だろう。どくどくと、理由もないのに心臓が跳ねている気がする。アイツは怒るのだろうか、それとも泣くかな。ああ、ばかだな。
生きたい、だなんて、とっくに今更の願いだっていうのに。

私の血肉は既に現世ではないのだから、お前と共になんて大それた願いなど抱くべくもない、大丈夫、ちゃんと理解っている。そういった自衛の言い訳だけは一人前に、結局先延ばしの答えは私の中で芽吹くことすら出来ぬまま、死んでゆくのだ。私は本当に莫迦者だ。笑えない。笑えない上に泣けてきた。

目蓋を下ろすと広がるオレンジ色。いつかの夕日のようにあたたかく、あざやかな生命。触れたくて伸ばした手の矮小なことといったら無かった。
今もそう。伸ばした左手の先には空の青しかなくて、溺れるように沈むだけ。生きたいと願うのに、それは余りに遠くて、まるであの日のそらのようで。





(いち、ご)





黒に沈む刹那、何かが聞こえた気がした。





080116


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