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恋とか愛とかそんな甘ったるい思考にさえ至らぬ程日常になっていた。隣に居るのが当たり前だなんて、いつからそんな危機感ゼロなお気楽思考に成り下がってしまったのだろうか。理解っていた筈なのに、別れのその日はいつだってすぐ傍にあることくらい。それなのにこの日になるまで動かなかったのは偏に俺の怠慢と過剰な自意識に因る。最早手遅れかも知れない、けれども今を逃せば絶対に手に入らない。さわさわと賑やかしいターミナルに響くは彼女を連れ去るアナウンス。意外と少ない見送りに囲まれ、小さな荷物と沢山の餞別を抱えた気のない少女へと一歩詰めると同時、華奢な腕を強く掴む。形容し難い程不快な顔をされたけれど、触れる事で漸く自分を補えた様な気がしたから構わなかった。まるで欠けた半身のように、パズルのピースのように、君が居なきゃ俺が完成しない。


「…いきなり何を、」
「…行くな、っつってんでィ」


さてさて勇気の果てに辿り着いた真実は余りに残酷、三秒後には恰好絶好の笑い話。曰く、彼女が出発するのは只の旅行、二週間程度で帰ってくるそうだ。――とどのつまり、俺は旦那にしてやられたって訳で。チクショー 騙された。ここぞとばかりに馬鹿にされ揶揄われ爆笑されて純粋な男心はズタズタになってしまったけれど、触れた腕は矢張り俺の延長上にあるように馴染む。嬉しくもないのに笑えてきたのはきっと君が傍にいる十四日後に思い至ってしまったから。





080305



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