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嗅覚を刺激するは慣れたニオイ。
まるで絡繰りの様に眠りから覚めて開け放たれた窓向こうの夜に目を向ければ、そう遠くない場に、煙を伴うオレンジ色が見えた。ああそういえば、今朝方出くわしたあの地味な真選組の隊士が言っていたっけ。「近頃は物騒ですから、夜遊びは控えた方がいいですよ、特に今夜は、止めた方がいいです」。
成程彼等は、確かに警察であった。
めかし込んだチャイナドレスの端を、無意識に握り締める。ああ、いやだなあ。このニオイの主は、もしかしたら馴染みの連中かも知れない。サドやゴリやマヨがそう簡単に殺られる訳は無いけれども、それでも彼等が血を流さないという保証は何処にだって無いのだから。ああ、いやだ、いやだ。其の考えに至りながらもどうして。どうして。
この赤いニオイはどうして、こんなにも蠱惑に満ちている。
ぞく、と粟立つ私のカラダ。首後ろのざわざわとした感覚に息を呑んで、ふるりと背筋を揺らす。誤魔化すように唇を噛めば口内に広がる赤い味。その血を嚥下する事で今直ぐに飛び出して行きそうな足をどうにかその場に留め、心の中だけで「たすけて」と呟く私は成程確かに、どこまでも夜兎であった。






070912




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あきゅろす。
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