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雨は此の世界に飽きる事は無いのだろうか。上から下へ。下から上へ。あたしは何処に行っても見上げる事しか出来なくて。雨は大地に落ちて、又空に戻って。その身を濡らす事ですら今を過ぎては流れて乾いてゆく。世界を通り抜ける様は優しくも残酷に。一時の感傷を捧げたって何の意味も為さない。優しきかな、酷薄かな。
キスケさん、にゃんこ。声に出して指を差したら、彼は声に出さず扇子の下だけで笑いながら柔らかいタオルと温かい牛乳の準備を始めた。雨は変わらず、万物に流れてゆく。黒い尻尾がゆらりと揺れた。通り過ぎるものに意味なんかないのに。呟いたあたしに「通り過ぎるからこその意味もあるんですよ」と一言添え返した彼の瞳の色を、言葉無く挑む様に雨空を見詰めるあの黒くて小さな背中を、ただ。



あたしは唯見上げるしか出来なかったの




―――雨が早く止んでしまえばいいと思った。



070815


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あきゅろす。
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