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肉臭漂う路地に獣は居た。
只でさえ致命的に人目を引く様相の癖に、今宵は御丁寧と血のニオイ付き。そういえば数刻程前に警笛が鳴っていた気がする。斬ったか斬られたか――恐らく前者であろう事は容易に予測が付くから態々問うたりはしない。元々気安い関係でも熱烈に切迫した間柄でも無いのだから、尚更。此の路地は近道だったけど仕方が無い、面倒に巻き込まれぬ内に帰ろう、と大人しく踵を返した私の背中に、声も掛けずに放たれた殺気は余りに不躾が過ぎて。反射的に抜いた傘で振り返り様初太刀を受け流すと同時、獣の隻眼が撓むのを視界下方向に捉える。後方への跳躍を追随する二撃目は、中空で首を捻る事で薄皮一枚のみの犠牲に終わらせた。年端も行かない美少女を背後から襲った挙句、行き成り眼を狙うなんて趣味が良いにも程がある。半ば呆れ顔の私に、無暗と多弁な獣―どうやら興が乗っているらしい―が言う事には、生まれた日には殺したくなる、と。
傍迷惑な死神も居た物だ、つくづく彼は歪んでいる。悦びの日を鮮血で染めるなんて、夜兎の求婚じゃあるまいし。獣を殺せば彼が泣くし、私が死ねば彼が泣く。さてさて如何して逃走を計るべきか、考えるのは不得なんだけど。なあ。





070810



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