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茹だる様な暑さで目が覚めた夜の不快感と言ったら。背中はべったり、額も頬も、小さな双丘の間ですらしっとりと濡れそぼっている。或いは世界が湿っているのかも知れない、とぼんやり思った。夏はキライだ。元々夜兎は暑さに弱いけれど、たとえ私の身体が普通を有していたとしても此の不快さを受け入れる自信は無い。駄目だ、このままでは蒸し兎の完成に至って仕舞う。美味しく食べるのは好きだけど美味しく食べられるのは御免ヨ。決意と共に舌打ちを一つ、無理矢理に布団から背中を剥がして上体を起こす。襖を開けると其れだけで僅かな涼が得られた。どうやら私の居住する狭暗い長方形の空間は、此の家で最も熱気溢るる空間だったらしい。其れを思うと益々不愉快、自然寄る縦皺を眉間に、私は枕一つ持ってぺたぺたと目的地を目指した。其処は私がゆっくりと寝られる場所。別に暑さは軽減出来なくても良い、此の際妥協は必要だ。朝起きたら絶対怒られ叱られ絶叫を上げられるだろうけどそんな事は大した問題ではない。
斯くして私は此の家の主である銀髪の布団に侵入、嗅ぎ慣れたニオイと僅かな寝息にゆっくりと目を閉じる、ああ幸せ。熱帯夜の不快を打ち消す魔法、出来ればもっと正面からくっついてみたいけれど暑いから勘弁してやろう。ああ、ああ、しあわせ。おやすみ皆、おやすみ世界。翌朝の惨事を予想しつつ、私は静かに眠りに就いたのであった。






070804



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