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「私が違う世界から来たって言ったら、お前――」


――笑う?


随分と淡泊に、表情さえも稀薄な侭、清々しい程に普段通りの彼女は言った。笑えねーよ、と唇だけでなぞる。言葉にするには疑う要素が少な過ぎたから。何て出鱈目な女だ。彼女を形成する殆どが出鱈目であった事くらい、疾うの昔に分かっていた筈だったのに。上顎に張付いた舌をベリと剥がして彼女の背に一歩近付く。別れの予感がチリリと靴裏を焦がした。夕暮れの川。湿風の土手。時間は戻らないし、経過を無しに過ぎたりしない。飛んで仕舞うのは、彼女だけ。今こそ時間が止まれば良いと願うのに切実なのに未だ浴衣姿だって見てねーのに、俺はもう飛べない。畜生畜生チクショー。


悔し紛れに寄せた体からは制汗剤のニオイがした。みっともなく鼻水を垂らして泣き喚く彼女が堪らなく好きだと思った。



→A


あきゅろす。
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