「悪い事は言わねェ、旦那だけは止めておきなせェ」 何でお前にそんな事言われなきゃならないアルか。 「あの男がてめーを女として見るわけがねェだろ」 大きなお世話ネ、んな事テメーに言われなくてもわかってんだヨ。 「いつまで家族ごっこを続ける気でィ、お嬢さん」 ウルセー、黙れ。私の勝手ネ、私が好きで此処にいるんだから、銀ちゃんが私をどう思ってようと関係ないヨ。 「結局毎晩旦那に置いていかれるくせに」 …子供はお酒がのめないから。早く寝なきゃ、いけないから。 「あいつは、絶対にお前を連れて行きはしない」 私が子供だから。大人になれば。 「この先何年経っても、結局お前はあいつに置いていかれて」 もう止めて、いい加減にしないとその首もぎ取るヨ。 「そうして、誰も幸せになんかなりゃしねェんだ」 五月蠅い、黙れ、わたしはしあわせなの!銀ちゃんがすきなの! 「だから、旦那だけは止めておきなせェ」 … 「…かぐら」 ―お前なんか、大嫌い…っ。 結局わたしの言葉は全て口のそとには出なかった。背中にまわされた腕はとても力がつよくて、この上もなく自分勝手で、滑稽な程にあつくて。 わたしによく似ていたから。 070719 *ブラウザバックでお戻り下さい* |