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荒々しい手つきで右側についたポケットに手を突っ込んだと思ったら、すぐに煙草の箱を取り出した。軽く箱を叩いて、中にある煙草を1本、つまみ上げる。そのまま口にくわえて、また右側のポケットに煙草の箱を仕舞う。慣れた手つきだと、私は思った。何時から吸っているのかとたずねたら、もう忘れた、と言われた。左手の長く、綺麗な指の合間に煙草を挟み込み、支えながら、右手で簡易なライターを取り出し火を近付ける。それに火がついて、口から離す。一緒に白か、それのもう少し濁ったのか、苦い煙が宙を舞った。机にもたれかかっていた腰を、イスへと移動させて、深く腰掛ける。全ての仕草が、その1つ1つが、綺麗だと、私は思った。ここは禁煙じゃなかったのと、私が言うと、今更止めてくれるなと笑われた。先生の仕草には、隙がない。止められない、止めないで、って物語ってるみたいだ、って、そう思って言いかけたけど、止めた。先生はいつもここで煙草を吸うのかとたずねると、ぶっきらぼうに、時々な、と答える。いつも、直ぐに会話は止められてしまうのだ。でも、悪くない。
先生には恋人がいるのかとたずねると、わからないと、いつも曖昧に返される。昨日はさあな と返された。でも、それも悪くはない、と思う。どんな人が好みなのかとたずねると、駆け引き上手な女だと、はっきり、答える。どうしてと、またたずねると、わくわくするからだと、声を殺すようにして小さく笑った。たまに見える先生の子供みたいなところが、好きだと、思う。私もつられて少しだけ、笑った。先生は私のことを、どう思うかとたずねると、決まって先生は、黙る。苦笑い、するのだ。そして決まって、左手の指の合間の煙草から、灰がハラリと散るのが目にはいるのだ。



教えてよ上手な恋を
(叶わないと言い切れる恋はない)



2008/01/25 (C)mika. 






 


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