[携帯モード] [URL送信]




私はよくよく服などに出来た毛玉を毟る。無意識に、毟る。愉しいのだとか、暇つぶしなのだとか、そういった感情も、どんな感情ももたないで、無意識に、毟る。ひとしきり毟り終わると、どっと私に孤独感がのしかかる。それもまた自然にのしかかる。そして私は疲労感に苛まれる。気付けば時計の短い方の針が3つ4つ、右回りに移動していたりする。酷い時には短い針が1周している。でもそのことを悔やんだりすることを、私はしない。時計の針が幾つ分進んだか朦朧と数えていると、だんだんだんだん意識がはっきりとしたものに変わる。すると決まって後ろから声がする。私は、それが妙に心地良かった。何も知らないような、だけどもどこか強気で挑発的な、そんな声が心地良いのだ。そんな声に私は一瞬だけ、身を振るわせる。ただただ、一瞬だけだ。その声はだんだんと近づいて、私を捉える。腕が、私の前で絡み合う。後ろから抱き締められたかと思うと、これもまた決まって左耳に吐息がかかる。そのまま左耳を弄ばれることも、ある。目が完全に覚めて意識がはっきりしすぎるくらいはっきりしてくると、私はまた無性に毛玉を毟りたくなる。それを私に絡みつく赤也が気付いて止める 。いつもの、決まったことなのだ。


『かまってください』


と、小さく、決まって左耳に囁く。また、毛玉が毟りたくなった。余りにもしつこいので、いいよと口から言葉を漏らすと、また強く抱き締められる。2人共何も言わない時間が少しだけ過ぎていく。左耳に熱い、舌の這う感覚があったかと思うと、いつの間にか正面を向き合っている形になっていた。


『キス、して』


少し、否酷く寂しげな声を出して鳴くから、囁くから、私はそっと頭を撫でてやった。いつの間にか肩の上に移動されていた赤也の腕が、背中に回され、ぎゅうと強く抱き締められ、そしてまた離れ、またもう1度ぎゅうとされた。ほら、また毛玉のことが頭をよぎった。どうしてこう、気が滅入る。赤也が言う。


『どうしたら、俺、あんたの中に入れますか?』

私はあなたを愛しているのだろうか
(頭の中には、もう何も分かるものなんてない)



2008/01/24 (C)mika. 






 


あきゅろす。
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!