どうせいつか別れがくるような必然的な出逢いを求めて、ずっとふらふらしてるのは性に合わないんだって、そう自分に言い聞かせてきてもう何年経ったろう。初恋というものは、今から考えてみたら嗚呼あれが初恋だったのかというくらいのちっぽけなものでしか私の記憶には残ってもいないことは苦しいけれども事実で。恋愛なんて、と、頑なに否定を続けたいわけでもないのも、実は事実。出来ることなら上手く付き合っていきたいのに、そう思ってもやっぱり最後の時はくるものだと思い知らされる。
『お前高校どこ行くんだっけ』
「北の方、かな」
『俺、まんま上がる』
「うん、昨日も聞いた」
部活もやっとのことで引退した丸井と並んで歩く帰り道は、もう後少しでしかない。学校に来ることも、もうあと少ししかなくて、3年間履き潰した上履きだって、朝校門の前で真田と柳生に挨拶をするのだって、クラスではしゃいでわいわいやるのだって、仁王が真面目な顔して数学受けてる横顔だって、もうあとちょっとの話でしかなくて。こうやって帰る帰り道が、もっともっとずっと続いて、長くて、もしかしたらずっと同じ道で、もしかしたら進めてないんじゃないかなんて
、くだらなくて笑えちゃうことを考えてるのだって、全部全部、私の勝手なエゴで。寂しくなるから、あと何回一緒に帰れるか、なんてのも数えたくない、それも私のエゴ。
そっかって言ってこっちを向いて、少しだけ笑う丸井を横目で流した。少し寂しそうな顔なんてするから、私までしんみりしてしまった。いつ、泣き出してもおかしくないなんて、自分で思うあたり、私は自分に酔ってるんだと思う。横で丸井がまだ苦い顔をしているから、気持ちだけ早く歩いた。ほんとは早くじゃなくて、ゆっくり歩きたいのに。そうできないのは、やっぱり私も寂しくて、うっすらだけど、涙目になっているからだと思う。
もう少ししたら私たちは卒業で。丸井は丸井、私は私の学校に進学して。きっと丸井は立海の高等部でもテニスを続けたりして、ずっとみんなから愛されてって。私は、きっと、ずっと、丸井のことを考えながら勉強とかして。時々また悲しくなって泣いちゃったりして。ほら、ねえ、丸井、柄にもなく恋愛体質になっちゃってる、私。でももう引き返したりできない。この苦い気持ちは忘るちゃいけない気がしてる。ねえ丸井、ねえ丸井。
「あのさ」
少しだけ前を歩く私についてくる形の丸井に声をかける。自然と呼びかけていた。丸井が大股で歩いてきて、肩を並べてまた同じ位置についた。いつも、毎日、ずっと、こんな風だったらいいのに。2人で肩並べて歩いて、笑って、笑って、丸井が笑うから、私も笑って、ずっとずっと笑っていられたらいいのに。
見え透いたホント
(口にして言えないけど)
(思ってたよりずっと好きだよ)
2008/03/04 (C)mika.
桐原ちゃんへ(^ω^)
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