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夜のコンビニ。ほんとに偶然、阿部くんに会った。
「篠岡?」
「わ、阿部くんだ」
「何してんの?」
「ちょっと飲み物買いにきたんだー」
ハーフパンツにTシャツ。部屋着のまま出てきたらしい阿部くんは(そういえばこのへんだったな、阿部くんち)、こんな時間にこんなところにいるわたしにほんとにびっくりしたみたい。そりゃそうだね、わたしの家はここから何駅も離れてるもの。
「いや、ちげ、篠岡んちこの辺じゃねーのにさ、」
「あ、さっきまで友達と遊んでたんだー」
「あー、そっか」
納得がいったみたい。ふうんって呟いて、素っ気なくも自分の買い物に戻っていってしまった。(阿部くんは何買うんだろう)
「阿部くんは?」
「え?何が?」
「何買いにきたの?」
「あー、牛乳プリン」
「え!」
「あ?」
失礼。思わず大きな声を出してしまった。だって、ものすごく意外なものだったから! (阿部くんが、牛乳プリンって!)意外だね、って言うと、そう?なんて、そのお目当てのものを手にとりながら、さらりと返された。(やっぱり意外。ふしぎな光景だ)
「ん、」
「え?」
「それ、」
「え?これ?」
差し出された手に、よくわからないまま持っていたペットボトルを渡すと、阿部くんはそのまま、牛乳プリンと一緒にレジに持っていってしまった。
「わ、いーよ阿部くん!」
「別にいーよこのくらい」
「そんなの、悪いって!」
「いーから。素直に受け取っとけ」
こうすることが当たり前みたいに言ってのける阿部くんに、わたしはもうそれ以上何も言えなくて、清算が終わるまで黙っているしかなかった。
「はい」
「‥ありがとう」
「ん」
手のなかに落とされたペットボトル。なんだかさっきとは違って見えるのは、どういうことなんだろう。
(阿部くん、なんかよくわかんなくなっちゃったなー‥)
(こんなことしてくれるひととは思わなかった)
(意外だなー‥)
すたすたと先を行く阿部くんを追いかけて、外に出る。むわりと湿気を含んだなまぬるい空気。
「じゃーな」
「あ、阿部くん!ありがと!」
「いーよ、そのくらい」
「‥うん、」
「じゃあ、気いつけて帰れよ」
「うん」
背を向けて歩き出す。なんとなく、目が離せなくて見つめてたら、阿部くんはふと振り返って、言った。
「‥あ、」
「え?」
「そういやさ、篠岡今日化粧してる?」
「え‥、うん、少しだけ」
「ふうん‥、」
「‥?」
「や、ちょっといつもと雰囲気違ったから、なんとなく」
「!」
「それだけ、」
「じゃな」
そして、今度こそほんとに遠ざかる後ろ姿。わたしはというと、かっと顔に集中する熱と、どくどくと響きだした心臓に戸惑うばかり。とんだ不意討ち。なんてひとなんだ。はじめて、知った。
(なんていうか、)
(‥‥‥照れるなあ!) 口に含んだ飲料水。つめたくて、すっとのどへと通るのがわかった。



これはこれは、なんだかたいへんなことになりそうだ。




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abcyというか何というか。それっぽいものがかきたくて\(^o^)/(‥)
おとこのこから「化粧してる?」って言われるとなんか照れます。よね。という。(?)

2007/06/05


あきゅろす。
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