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※燐死ネタ








ぐらりと世界が歪む。ガクガクと震える足では自分の身体を支えることが出来ず、俺は剣と共に地面に倒れ込んだ。衝撃で口からどぷりと血が溢れる。身体が動かない。


青い。
世界が、青で染まっている。


ああ、これは炎だ。俺の身体に纏わりつく忌々しい魔神の炎。それが今、俺を呑み込もうとしている。



「兄さんっ!」

遠くからバタバタと激しい足音と同時に、俺を呼ぶ雪男の声が近くなってくる。こっちへ来るな。そういいたいのに全身が痛みに震えていて、うまく言葉にならない。


もう終わりだ、と思った。



「兄さん、兄さ…っ」
「……は、やく、離れろ」
「嫌だ、逝かないで…、兄さん」

チリチリと焦げる音がする。
コントロールの利かなくなった炎が、ゆっくりと雪男の身体を焼いていく。雪男から痛みを堪える声が漏れる。それでも雪男は俺から離れようとしなかった。絶対に熱くて、痛いはずなのに。

俺の頬にぽたぽたと雫を落とす雪男はまるで子供の頃の彼のようで、懐かしいなあ、なんて呑気なことを考えていた。


「ゆき、お」


かすむ視界。
力を振り絞って、炎の中から目の前の雪男に手を伸ばす。



雪男が俺を守ってくれるのと同じように、俺も雪男を守りたかった。
雪男が笑ったら、俺も一緒に笑って、悲しいときは一緒に泣いて。時には喧嘩して、仲直りして。
そういう風にずっと過ごすつもりだった。

何よりも俺は悪魔で雪男は人間だから、雪男は先に死んで、残されるのは俺の方だと思っていた。


でも俺は、先に死んじゃうみたいだ。
これからは雪男を一人にさせちゃうんだな。
ごめんな、雪男。ごめん。



「あいしてる」
「っ、」

たった一人の、俺の弟。
世界一お前をあいしてる。




徐々に意識が遠くなる。

青い炎がおれを包み込んで、最期にちらりとみえたのは、雪男のぐちゃぐちゃになった泣き顔だった。


End.


自分の炎に殺されてしまう燐。
そんなことありえないけど。




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