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『君に縋る』


心は、どうしても上手く機能しない。
感情だけが、爆発しそうに駆けて行く。

これは、どうしようもない恋の嵐。


君に出会ったのは、偶然だった。
春の陽気も、鬱陶しくなるような暑さに変わり始めていた季節。
君は馬鹿だから、この僕のテリトリーに無断で群れでやってきた。

あぁ。馬鹿な子。

実は、随分と前から気にかけていた存在だったから、このまま一発殴って気絶させて美味しく頂いてしまおうと、そう思っていたのだ。

けれど、現実は甘くなかった。

スリッパ。

こんな物が僕の頭に振り下ろされるとは・・・
思っていやしなかったのだ。

「で、それでもめげずにツナにアタックしようと頑張るお前と、あれ以来、殺されるような殺気とその原因から逃げ回っていると思っているツナと・・・」

まったく、お前らは馬鹿じゃねぇのか?

カップに並々と注がれたカプチーノに舌鼓を打つリボーンと、普段の殺気はどこへやら、へこみ気味の雲雀は一枚の写真を前に優雅なティータイムを過ごしていた。(とは言っても、優雅に過ごしているのはリボーンだけである)

「ねぇ、赤ん坊。どうしたら綱吉は気付くと思う?」

「んなもん、自分で考えやがれ。」

「そう・・・そうなんだけどね・・・あんなにも毎日逃げられ避けられ怖がられて・・・正直この僕がへこむ日が来るとは思ってもみなかったよ。」

これは重傷だな。

リボーンとて分かってはいるのだ。
雲雀が、気まぐれで綱吉を追っているのではなく、本当に好きだから追っているのだということは・・・
けれど、鈍い事でもダメダメ加減を際立たせている綱吉に、何と言って雲雀を意識させたものか・・・
正直、雲雀の事はリボーンも気に入っているので何とかしてやりたい。というのは建前で、ウザい。
こう、毎日相談される方の身にもなってもらいたいものだ。

二人して、ウーンと首をひねる。

そして、ニヤリとニヒルに上げられる口角。
それは、綱吉にとっても雲雀にとっても、良くない事が確実に起こる前触れであった。

けれど、この時の雲雀には、その考えに付き合ってしまうほど弱った心しか用意されておらず、結局は黒い赤ん坊の退屈しのぎに付き合わされる羽目になったのである・・・


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