今日の当番であるソウルは、そろそろ夕飯の準備をしようと冷蔵庫の前に立つと少し気合いを入れる。
冷蔵庫の扉を掴むと素早く開き中身を見て、すぐさま閉じる。
何度見ても変わらない冷蔵庫の中身をじっくり見る必要もなく、どっかで聞いたエコとやらを実感するソウル。
マカは今頃、部屋でテストに向けて勉強中だろう。
さっきまではソウルにも煩い位勉強しろと言っていたが、時間が勿体ないと言って戻っていった。
もう一度冷蔵庫を開けて、今日使う分だけを素早く取り出し、そしてサッと閉める。
「ふっ、クールだぜ」
一連の動きに満足したのか、きちんとエプロンを装着してからソウルは夕飯に取り掛かった。
人参、ジャガイモ、玉ねぎは皮を剥いて、一口サイズにカット。
肉は少し大きめにカットし、鍋やらフライパン、カレーのルーも用意する。
そこまで準備した途端、マカが初めてソウルにカレーを作ってくれた事を思い出した。
確か今のソウルと一緒でエプロンをして、ルーを入れて出来上がりの筈が、何故か親の仇のようにそれを睨み続けた後のこと…。
――――…
初めて食べてもらう手料理に、マカは何となく気合いを入れたかった。
しかし、材料の関係でカレーになったのだが問題が一つ発生。
それは“果たしてどこまでの辛さにしたらいいのか”だ。
とりあえず自宅には辛口と中辛のルーがあったのだが、まさか甘口でなければ食べられないなんて事があるかもしれない。
そうなると非常にマズイ…気がする。
様々な葛藤の後、勇気を振り絞り後ろにいるソウルへと声を掛けた。
「ね、ねえ…甘いのがいい?辛いのがいい?」
「はあ?」
折角勇気を振り絞って聞いたマカだったが、ソウルは雑誌に夢中だったらしく変な声が返ってきた。
「何、どっちなの?」
「あー、案外辛くても平気だぜ」
「ふーん…」
折角親切心から聞いたのに二度も微妙な返事が返ってきたマカは、ウダウダと悩むのを止め、自分好みの辛さにしようと決めた。
そこからの行動は素早く、あっという間に出来上がったカレーを盛り付ける。
「「いただきます」」
なるべくゆっくりした動作でスプーンに一口分を掬い、ソウルが食べるのを待つ。
「…スゲーな。オレ好みの辛さじゃん」
「え…ほ、ホント?無理してるんじゃなくて?」
「はぁ?なんで無理する必要があんだよ」
「そうだよね、うん。気にしないで」
「………?」
意味が分からないというように首を傾げるソウルを無視し、安堵し空腹を思い出したマカはモリモリと食べだしたのであった。
―――――…
当時の状況を思い出し必死で笑いを堪えていると、不意に後ろから声が掛かった。
「何、どうかしたのソウル?」
「はぁ?!…べ、別になんでもねぇよ!」
「えぇー、何か怪しい。何考えてたのか教えなさいよ!!」
「だから何でもねぇって言ってんだろうが!火が点いてんだから危ねぇって、オイ!!」
「何でもないならいいなさいよ」
鍋を背に向けマカがこれ以上近づかないようにするソウルに、なにがなんでも聞き出そうとしてソウルに迫るマカの攻防は、カレーが残念な仕上がりになるまで続いた。
今と昔のカレー話
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オフ友のゆささんから戴きました。
ジャンル外なのにわざわざソウマカを書いて下さり、ありがとうございました!
カレーの辛さの好みまで魂の共鳴をしちゃっている二人がかわいいと思いますv
ゆささん宅はこちらからどうぞ。
2010.03.05up
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