受け付けやら何やら済ませて二人で控え室に。
スタッフに進められるまま来たはいいが、行った控え室ってのが新婦の為の部屋らしく藍から『出てって』の一言。
渋々部屋出て俺も着替え。…紋付き袴だなんて堅っ苦しいモン着慣れねぇから疲れてたまんねぇ。

でもって、支度終わらせていよいよヴァージンロードの前に。

――…声、出なかった。二人で選んだ衣装着て、薄く化粧して…みた事ねぇ藍がそこにいた。
すげぇ間抜けなツラしてたんだろうな…。藍がキレイで、何も言えなかった。
改めて、目の前の相手が俺の嫁になんのか、って…んな事考えてたら藍にケツ叩かれた。

バカみてぇにデカイ扉に手ぇかけて、教会ん中に。

形式ばった式が終わってやっと藍と二人の時間。
っても俺は昼過ぎから収録があったもんだからよ。…たいした事もしてやれなかった。
とりあえず、なんてドレス着たままの藍の手ぇ引いて教会の裏手にある丘に。歩きにくそうな藍を見かねて抱えて階段登ってよ。
――…海、見せてやった。

前々から海が好きだって呟いてたからよ。この景色見せたくてここの教会選んだ。ま、藍は後付けの理由だっていうかもしんねぇけどな。

慌しく終わっちまった一日。
正直な話、まだまだ“藍の旦那になった”っつー自覚は薄い。
けどよ…急がなくとも時間はある、だろ？

これからは、遠慮も変な気遣いもしねぇ。素直に…ちっとはワガママなくらい藍の事求めて、腕ん中閉じ込めてやっからよ。
だから何も急ぐ必要なんかねぇ。

ゆっくり、確実に。
俺らの“家庭”ってやつ…築いてこうな？