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メゾン・ド・キラル










「ほら、今日からここが新しい家だ」
左手で荷物をかかえなおしたアキラは懐に抱いた小さな猫に、いつもより明るい調子で声をかけた。が肝心の猫、コノエはビクリと身体を震わせ耳を伏せると、更にしょんぼり俯いてしまった。
「ごめん、アキラ。俺のせいでマンション追い出されて…迷惑、かけて…」
「何度も言ってる、お前のせいじゃない」
力なく謝罪をくり返すコノエの頭を撫でてやりながら、アキラは"メゾン・ド・キラル"とおおげさな金メッキの横文字が入った、その建物の門を見上げた。


ナノが、雨の中をさまよっていた子猫を拾ってきたのは2ヶ月前の事だった。猫を飼うつもりなど毛頭なかったのだが、体力を消耗しきっていた子猫を「戻してこい」とは言えなかったし、共に寝起きし、次第にアキラはコノエに情が湧いた。ナノが「うちの家族になればいい」とコノエに告げて、滞りなく暮らし出したのがひと月前。それから少しして大家に子猫と暮らしていることがあっさりとバレた。アキラ達はペット禁止のマンションを引っ越さなければいけなくなり、…ここへ至る。
多少の不安は付き纏うが、ナノとコノエがいればなんとかなるだろう。
アキラは、もう一度小さな猫をやさしく抱え直すと建物に向かって歩き始めた。

































































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