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あの子は僕を嫌いだと云う。
でも僕はそんなあの子の事が大好きになった。
一目見たあの瞬間からそれを運命だと感じたのは僕がロマンチストとかセンチメンタリズムな感傷癖を持っているとかそういう次元の問題じゃないとすぐに認識することが出来た。容易だった。彼はひたむきで優しくて強く加工されていない原石のまま無限の可能性を秘めているのだと直感したのだ。彼は美しい、美しすぎる。手を出してはいけない程に綺麗なのにああ僕もなんて卑しいのか。この手で貶めてやってしまいたくなるくらいに求めてしまうのだ。
強い眼差しも失われることのない瞳の力も、この世の全てさえ彼に味方しているかの様に感じてしまう一瞬の数々は僕があの子に夢中になるには充分すぎてしまう程溢れていた。
こうして今も無防備に僕の腕の中で寝息を立てる君を手に入れたという優越感に浸りながら信仰心を無くしたみたいにどこか切なくなる焦燥感さえ君に焦がれる心臓の一部にさえなりうる。華奢な身体についたしなやかな筋肉も、今は、今だけは全てが僕の物だという証拠だった。

あの日のあの子。
この時のこの子。
どちらも僕には手放せない過去と現状の素晴らしい天使なのだ。





 END


2009.12.02 夜忌

大誤算はルビがいなかったらきっと生きてけないんだと思います




 


あきゅろす。
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