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「俺ちょっとうんこしてくるわ!」


谷口が場違いに明るい声を出した。そのまま返事も聞かずに教室から出て行った背中には視線を送らずに、俺はただ目の前の若林だけを見つめた。


「お、あ」

「春日…、あの、話、聞いてた…?」

「あ、う、うん…、ごめん…」

「…いーよ、別に」

痛々しい程切ない目をした若林の体は少し震えていた。俺は耐え切れずに、その小さな体を強引に胸の中に閉じ込めて、肩口に顔を埋めた。



「ぅぶっ」

「若林…」

「ちょっ、春日、鼻うった…」

「若林…」

「春日、……としちゃん」

「都合よく、話整理していいの?」

「…うん、いーよ」

「若林は、谷口とは付き合ってない」

「…正解」

「若林は、恋をしている」

「…正解。」

「若林は…俺のこと好き?」

「うん、せいかい」

シャツの胸元が温かい水分を吸っていった。ぎゅうぎゅうと背中に回された腕に力が入る。
俺も、堪え切れずに若林の肩を濡らした。


「若林…俺、お前のこと大好きだ」

「知って、る」

「ずっと好きだったよ」

「言うのおっせえんだよ、バカスガ」


腕に力を入れると更に密着する二人の体。胸に熱いものが込み上げてくる。さっきまでの気持ちが嘘みたいに、幸せ。



「若林…あいしてる」

「その五文字がずっと聞きたかったよ」










がらっ!!
突然力強く開けられた扉に驚いて二人は体を離す。ムード台なし…。


そこに立っていたのは吉田だった。


「ちょっとぉー!」

「お、おはよう、吉田」

「もぉー、くっついちゃったの!?俺、春日のこと狙ってたのに!」

「…吉田ぁ、お前俺に歯向かうの?」


ぞくり、背中が粟立つ。ブラック若林があらわれた。逃げたほうがいいぞ、吉田。


「俺は歯向かうよ!」

「昨日今日春日と仲良くなった分際で何ほざいてんだ、おお?!」

「…おお?!」

「「おお?!」」


俺は思わず吹き出した。おもしろすぎるだろ。どんどんどんどん心が軽くなっていく。
顔突き合わせて睨み合っていた二人も俺が笑っているのに気がついて顔を緩めた。

「何笑ってんだよっ」

口調は怒ってるくせに顔は全然恐くない若林。

「おっいおい、イチャイチャするなよ!」

笑いつつ、俺と若林の頭を叩く吉田。



こんな日が来るなんて思っても見なかった。暗い暗い、身勝手な強迫観念にまみれた迷路に迷い込んで、一生出られないかと思った。そんな日々を経て、今が訪れたんだろう。


何度言っても足りない。何回でも言おう。


俺は、若林の肩を寄せて耳元でもう一度、「愛してる」と囁いた。

耳まで赤くした若林の「…俺もだよ」という台詞を俺は生涯忘れないだろう。



(紆余曲折を経て今ここにいる)










あとがき

もうアホかと。塩子何やってんだと。
春日泣かせ過ぎてごめんなさい。えへへへ〜(死ね
始めたときはこんなに長くなるとは思わなかったんだなぁ。
谷口くんとか吉田くんとかまじですみません。吉田くんとか完全に空想上の人物です。


ちなみに
若林が春日に告白されたくて谷口くんに付き合ってるフリをしてくれないかと頼んだっていうどうでもいい設定があります。わかりにくし!


これにてGW連載は完結と致しますが、後日談とか、若林視点の小さい話とか書くかもしれないです。

連載に反応してくださった方、この連載を読んでくださった方、みなさんに塩子から五文字を贈らせていただきます(^^)

本当にありがとうございました!


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