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風唄










─‥ピピピピピッ

鳥の声が聞こえる



「おや、めずらしいですね」



鳥の鳴き声など久しく聞いていない。
いや、鳥に限らず『声』というものをもうずっと聞いていない気がする。
頭の中を流れ、離れない彼の声以外は。


「あなたも迷い込んできたのですか?」


僕以外は、人間はおろか動物でさえもめったに踏み込めないこの場所へと


「おいで‥」


そっと手を伸ばすと、鳥は僕の手の甲にとまった。

そしてその小さな口を開くと、僕の手の上で美しく歌い始める。









頬を優しく撫でる風
聴き覚えのあるメロディーと溢れ出す感情



嗚呼、ずっと抑えてきたというのに‥


会いたい 会いたい 会いたい 会いたい


壊れた機械みたいに、ただそれだけが何度も何度も繰り返される。



「綺麗な歌、ですね」


校歌に綺麗などと言うのは、少しおかしいかもしれない。

それでも、それは美しかった。




「お礼に僕もあなたに"うた"を教えましょう」




土産と呼べるかは分かりませんが、何も持たずに帰るよりは増しでしょう。



そしたら君はすぐにお戻り?
こんな場所に長くいてはいけないから




その小さな翼を羽ばたかせ
愛しい愛しい彼のもとへと











僕のうたよ 風になれ


























END.




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