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『カストルの誕生日、何をしたらいいかなぁ…』



そうぽつりと呟いたのはカストルの恋人・ラブラドールだった。



『誕生日、ねぇ…』



自分も検討がつかない、とでも言いたげに煙草の煙を勢いよく吐き出したのはフラウ。






12月も半ばに差し掛かり、寒さはより一層厳しさを増していた。

しかし昼間の日差しは暖かく、幸い今日は比較的気温も高かった為、ラブラドールは久しぶりに自分の庭でお茶をしようと、同じ司教であるカストル、フラウを誘ったのだが。



フラウはこうしてここにいるものの、もう一人の司教・カストルはタイミング良く大司教様に呼び出されてしまったのだ。


かくして彼はここには居ない。



フラウと二人でお茶を飲みながらぼんやりとした時間を過ごして居たのだが、ふとラブラドールが独り言の様に先ほどの言葉を漏らしたのだった。




『てゆーか俺はそもそも自分の誕生日すら知らねぇしな……。誕生日ってめでてぇのか??』


フラウにとってはまずそこから素朴な疑問だった。


『おめでたいよ!だって大切な人がこの世に生を受けた日だよ??生まれてきてくれてありがとうって…感謝したいじゃない。』


『……だったら…』




そう言うとフラウはしばらく黙り込んでしまった。
下を向いたまま、その内に吸っていた煙草の先端が灰となりフラウの服にぽとりと落ちていった。


『ぅおわっあっちぃぃぃい!!!!!!?』


フラウの奇声が温室中に響きわたる。


その声に、ぼーっと考え込んでいたラブラドールも我に返り、慌ててフラウに目をやる。


『ちょっとフラウ大丈夫?!あ、それよりも僕の庭で煙草は吸わないでって言ったでしょ!?』

『それよりもってなぁ…!ちょっとは俺の心配もしろよな!?』

『ふふっ、フラウは大丈夫だよwww』

『お前っ……言うなぁー…』

『ふふふふっ』




『遅くなりましたー……おや、随分と楽しそうですねぇ。』


急いで来たのか、少し息を乱して駆けつけてきたカストル。


『あっ、カストルお疲れさま〜』

『よぉ、お疲れさん!』


『随分と盛り上がっていた様ですが、一体何の話をしていたのですか?』



いつもの様に穏やかな口調で、穏やかな微笑みを携え、カストルは問いかけた。



『えっ……?!あ、大した事じゃないよ。ね、フラウ?』

『お、おぉ、おうっ!!』


まさか聞いてきた当人の話をしていたなどとは言えず、とっさにラブラドールは返事を濁した。


『そうですか…。ラブ、私にもお茶を淹れて頂けませんか?流石に喉が渇いてしまいました。』

『あっ、うん!ちょっと待っててね。』


『ありがとうございます。』


『良いこと思いついたぞ!』



ラブラドールがお茶を淹れていると、突然フラウが大声を上げ立ち上がった。

そしてそのままラブラドールの腕をぐいっと引っ張り、何やら耳打ちをした。



『っ……!』


勿論、その様子を目の前で見せつけられているカストルは気分が良くない訳で。

会話の内容も気になるが、とにかく二人を引き剥がしてやりたい気持ちでいっぱいだった。


しかし、ラブラドールは真剣に聞いている。


そして、みるみる内に耳まで真っ赤になった。


『え、えぇっ…!?無理だよフラウっ…』

『やれって。それが一番の方法だ。』

『…フラウ、ラブに何を吹き込んだんです?』



二人がそこに居る事をすっかり忘れてしまった存在の声にドキッとして振り向くと、そこには眼鏡を光らせ周辺に黒いオーラを充満させたカストルが座っていた。



『カストル違うっ…!!』

『黙りなさい。』




言うと同時に、温室内にまたしてもフラウの悲鳴が響きわたった。



カストルの眼鏡が光っているのをしっかり目撃したラブは、それ以上何も言えなかった。


あきゅろす。
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