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よく知っている、冷たい指先の感覚に目を覚ます。



まだ辺りは暗い。
真夜中だった。



寝ぼけ眼を擦りながら辺りを見回すとー…





そこに、居る筈のない人の姿があった。





Over







『よォ…、ラブ。』

『フッ、フラウ!?どうしてっ…』



起き抜けで、まだぼーっとしていた筈の意識が一瞬にして冴える。



だって、フラウがここに居る筈がない。
フラウは今ゼーレの地を目指すテイトくんと一緒に旅をしている途中なのだから。



それが、何故教会の、僕の部屋にー…?!



『フラ…』
『馬鹿野郎…』



そう低く呟くと同時に、僕の体は大きく反れた。


『っー…!?フ、フラウっ??』



フラウの大きな体の中に、僕は一瞬で閉じこめられてしまった。

力強く、でも優しく。

ちらりと上を見上げれば、フラウはつらそうな顔をしていた。



こうされている間も、僕にはさっぱり解らなかった。



何故フラウがここに居るのか。
何故そんなにつらそうな表情をしているのか。




何故、僕を抱きしめる手が震えているのかー…





『フラウ…、どうしたの?テイト君とゼーレの地に向かっている途中でしょ……?』

『………』

フラウは何も答えてくれない。
その代わりに、フラウの瞳が真っ直ぐに僕のそれを捉える。

見つめられて、息をする事さえ忘れた。
それ程にフラウの瞳は真っ直ぐに、強く僕を捉えていて。

その瞳がまるで、“解らないのか”と言っている様で。

僕はハッとした。


『ぁー…』


やっと声を上げた僕を、少しムスッとした顔で見ているフラウ。

もしかしたら……?


もしかしてー…






『心配、してくれたの?』

『ラブっ…!!お前はどうしてそうなんだよ!?』




やっぱり当たっていたみたいだ。


肩を抱く手に一層力が込められる。



『どうして全部一人で溜め込むんだよ。俺らは…同僚だろ?変なとこで大人になるなよ。もっと頼れー…』


『フラウ…』


『お前は優しすぎるんだよ。心が綺麗過ぎるんだー…。』

『そんな事、ないよ…』

『ここに来た時も、お前あんなん全部一人で背負って来たんだよな…』



フラウは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
きっと気のせいじゃない。

それは、フラウだって優しいから。


『それは、フラウだって同じでしょー…?つらい事、たくさん背負って来たんだよね?』

『そうだけどよ…』

『ー…ありがとう。』



嬉しかった。
こうやって、駆けつけて来てくれただけで。

それに君も、僕の願いを叶えてくれたよね…


『お前が強いヤツだって言うのは解ってるけどよ。…でも折れそうに弱い部分もあるって事だって知ってんだよ……』

『っ…』

『もうちょっと信用しろよな。俺には……甘えたっていいんだぜ。』

『……ふふっ、ありがとう、フラウ。…ごめんね、心配かけて。』



もう大丈夫だとにっこり微笑むと、フラウも解ってくれたのか、すっと肩を抱く手を離した。




『そろそろ戻んねぇと…。俺は傍にはいれねぇけどよ、何かあったらー…尺だがカストルを頼れ。』

『うん……解った。』


来たときと同じであろう、部屋の窓から外に出ようとするフラウ。

ふと振り返ったその顔は、月の光を背に浴びてよく見えなかったけれど。


『……ラブ、今幸せか?』


泣いている様にも見えたし、笑っている様にも見えた。



『ー…うんっ…幸せだよ。』



力いっぱい頷いて、駆けつけてくれた友を見送る。



『そっか…。ならいい。』





そう言って、フラウはホークザイルに乗って遙か彼方へと飛び去って行った。





フラウ、僕は今本当に幸せだよ。
こうやって駆けつけてくれる君や、カストルだって傍に居るから。


大切なモノをたくさん失ってきたけど、また大切なモノを手に入れたから。
一人になった僕の傍に、今ではまた大切な人が居てくれるから。


今度は絶対に大切な人を失わない様にするから。



だから大丈夫だよ。



僕は今、幸せ。


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ゴッドハウスの不正を暴いて、レムの魂が天に還った後ぐらいのお話。
フラウはラブの過去を知って、今まで一人で背負ってきたラブのところにこっそり戻ります。
ホークザイルで一っ飛び★←

なんかこれは恋愛とかよりも、ラブを仲間であり、弟の様に可愛がってるフラウって設定で書きました。
フラウ的にはもうちょっと自分を頼ってほしい感じです。

ゼロサム11月号が切なすぎて。
勝手に妄想してその後ラブたん書いちゃいました。
幸せって思ってたらいいと思って。

少なからずフラウはラブの事気にかけてるだろうし。。


カストルさんは…また別で書けたらいいなぁ!笑


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