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@につづき
『視線は青空 若干流川』







流川が屋上に着いて数分経ったころ、花道は突然音をたてて飛び起きた。

何度も周りを見渡し状況を確認。

 屋上、キツネ、流川、空。


あぁそうか、と冷静に判断出来ると 重いまぶたを無理矢理開きながら 横に目をやる。


「こいつ、寝てやがんの」
と言い放ってやって ため息。

呼び出す相手の選択に ため息。


「なぁ」
花道が、話しを持ち掛ける。
「ホントに寝てやがんなら起きんな

 起きてんなら好きに聞け」


言い終わってすぐにまた寝転がる。
視線は青空、若干流川。


「おまえ、彼女出来たらしいな」
「………」
「俺は焦った」
「…………」

「いつからだ」
「一ヶ月…と17日前」
「あー、裏切りもんだテメーは」


ギュッと閉じられた瞳は、太陽のせい。
自然に笑えたのは、己のせい。

「上手くいってんだろ」
「…知らねー」
「モテんなぁキツネのくせして」
「……うぜーどあほう」
「クソッタレが偉そーに」
「……うぜーってんだテメー」
「少しは自慢の一つでもしてみろよ」
「いい加減にしておけよ。喧嘩買うために来てやっ――」

跳び起きて花道に向けた身体は固まり、流川の拳が静かに緩まった。



目から一筋の水分が、頬を伝う。



どうしたとか、なんだの言葉も出ない流川を前に、花道の顔が腕で覆われた。

「―あー、マジありえねー」
「……」
「もうどうなって、んだっつーの」
「…さ くら ぎ」

腕の隙間から見せた笑う口元。
流川には いつかのあのときを思い出した。



『オメーがすきだった』
と告げられたあの晴れの日。

理解に時間を掛けたあのとき。
『俺、とんでもないやつを 好きになっちまった』
あんときもこいつは泣いてたっけと、流川が思い出すのに時間は掛からなかった。


泣いてた。
今と同じように少し笑って。


結局何も自分は返事も何もしないまま、いつの間にか普通の仲に戻ったんだ。



流川は 苦笑した。
うっすら笑んで、口を開く。


「俺には 今もバスケだけだ」





* * * * * * * * * *,


青く 青く広がった空に、雲が浮かぶ。
その日も、花道は空に向かってため息を漏らしてやった。

休憩の終了を知らせる彩子の笛の音が体育館に響いたと思うと、直ぐさま立ち上がり館内へ戻る。

狭い空間に響いたボールの音が、微かに空へと掠めた。





秋。

流川が彼女を振ったのは
あの屋上の会話から3日後のことだった。






-End-




―――――――――――――

ありがとうございました。


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