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         いつの日かの 口先は






流川が起きると、もう隣にはいなかった。


部屋には朝の涼しい風が入り込んでくる。
ただゆっくりと流れる朝の時間を、流川は楽しんでいた。



「起きたかキツネ」

低いのにどこか自分を撫でていくような 声。
普段は怒鳴り騒ぎ出される声もちゃんと聞けば まぁ落ち着いちまう、なんて考えていた流川は、すぐに我に返って
「うるせー」
と返事してやった。


ベッドから少し離れたところで、髪を湿らせ着替える桜木を見て気付いた。

「…どあほう、ランニングか」
「あーそーだよ。汗かいて風呂入るまでもおまえは寝てたんだ。少しは天才を見習えっつーんだ」

フンッっとばかりに見下した桜木、見下された流川。

ベッドに入ったままの流川には、文句の一つが出る前に「なんで起こさねーんだ」と本音の方が先に零れていた。



「おい どあほう」
寝ながら流川が呼ぶ。
「なんだ うるせー」
「…エロいんだサル」

着替えを眺めながら放たれた言葉に、一瞬桜木の動きが止まる。

「…お、おま…ちょっとそこで寝てろよ」
そう言うと、露出していた上半身に直ぐさまTシャツを通し、濡れた頭をタオルで掻き拭きながらそのままタオルを被ってベッドへ向かう。
大きな足がフローリングをベタベタと歩いていく。
一通り見ていた流川は桜木が動揺でもしてんのかと思ったがあえて黙っていた。


流川が横になるベッドまで辿り着くと、桜木はゆっくりしゃがみ、澄ましている男と目線を合わせた。

「おい キツネ」
「…………」
「誘うならもっとマシにやりやがれ」
「ふぅ…。朝から発情かエロサル」
「ふざけろ。何もされたくなきゃ早く起きてこい」
「…今日は試合だ。何かしたらぶっ潰す」
「天才がいるんだ、安心の一つでもしやがれ」


自然に重なる手と、手。
素直になれないでいるのは互いの口先だけだと気付いたのは いつの日だったか。

いつの間にか他愛のない話が部屋の中を駆けていた。



A.M 7:20


絡んだ指が、
そのままベッドの外へと引き寄せられた。





-End-






―――――――――――――
ありがとうございました。
あえてラブA途中で終わらせる
意地の悪い作品になりました…(ワラ


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