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           只今心拍数125





『す き だ』


何度叫んでも、何度伝えても、振り返ってくれることはなくて。

なのに

普段の生活は変わらない。



朝は「おはよう」って言って。
次移動教室だよって、少し笑う。
時々視線を空に移しながら、目の前で昼飯食ってて。
午後の授業を寝て過ごす。
無意識に視界に入る後ろ姿。
放課後の体育館。

変わってない。なにひとつ、変わってないのに。
俺だけが、ふわふわと気持ちを浮かせてた。






真っ暗になった夜の道は、不気味に街頭が揺らぐ。虫の声がまだ微かに響いていた。

練習試合をして帰って来た今、正直足はフラフラしてる。
大栄は、未だに鬼だった。特に先輩が抜けてから。
こんな学校があった日だって、歩いて3キロの相手学校行きだ。


少し間を開けて並んだ距離。もうすぐで僚に着くことを思い出し、俺は足を止めた。

5〜6歩進んだあと、やっと止まった俺に気付いた鷹山はどうしたの、と振り返る。
もっと早く気付いて欲しかったなぁとか どうでもいいこと考えながら、顔を上げた俺。


「…あのさ よー、ざん」
(ヤバい。心臓やばいかも。)
「なんで、そんな普通、なんだよ」

何が?と言いながら、鷹山の体がこっちを向く。
俺はまた俯いて、肩から下がるカバンの紐に手を掛けた。


「俺、おまえに言ったべや」
ヒューっと冷たい風に遊ばれる俺と鷹山の髪。顔だけは熱かった。
「お、男の俺が、おま、おまえにすきとか言ったべや」


どうしようもなく溢れたのは、友達の境界線で。


「怒るとか、笑うとか、避けるとか、なんか…なんかないのかい」
「…………」

黙ったままの鷹山の顔が、大体わかった。いつも見てた、し。

「俺ばっかテンパって、い、今もだしさ。返事とかないのかよっ」
(あー…すでに涙がそこまで来てる。)


「…これが、応えだって」

声が 近くだと気付いて顔をあげると、前に鷹山が立っていた。なにより言葉の意味を考えてた自分は、混乱していて。

「…そんなことで怒らない、笑ったりしない、嫌いならもう避けてる」
「そ、そんないっぺんに言っ」
「こうして普通にしてるじゃない」

そこには、少し困った鷹山がいた。
「それでもわかんないなら知らない」


鷹山は小さいけど大人だ。
俺よりずっとずっと大きい。



「…泣くと水分減るよ」と、想い人。
俺は うるさいべや と強がって見せて、少し鼻水を啜った。

また先を歩いていく鷹山を少し早足で追い掛けて並ぶ。

そんでもって自分は、今度こそハッキリ事を言わせてやろうと拳を握っていた。



只今 心拍数125くらい。
バスケしてた方がいいとか、ちょっと考えた秋、手前のこと。






-End-






――――――――――
ありがとうございました。


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