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俺の好きな人はとてもとてもズルい人。
心の中には唯一絶対の人がいるのに、それを隠して全てを愛そうとしている。






「黒ちんて本当は峰ちん以外好きじゃないよね。」

俺の部屋でさっきコンビニで買ってきたまいう棒を食べながら他愛もない日常会話のように黒ちんに問い掛ける。
聞かれた黒ちんはきょとんとした顔をしていたが、俺の言っている意味がわかると呆れた顔をする。

「何をバカな事を言っているんですか?そんな事あるわけないでしょう。」

「まぁ峰ちん以外好きじゃないって言うのは極端か。別の言い方するなら黒ちんの心の中にいて、一番大切にされてるのは峰ちんしかいないよねって事かな。」

「いきなりどうしたんですか、紫原君。言っている意味がわからないのですが。」

いつも通りの言い方だけどその言葉はとても冷たく、拒絶されているのがわかる。
でも拒絶しながらも威嚇をしている事もわかり、黒ちんの心の壁の鉄壁さにため息をつきたくなる。
踏み込んでくるな、自分のことなど放っておけと言うように俺を拒んで心の平穏を保とうとする。
さっちん達は優しいから黒ちんの歪みを知らない、と言うより見ようとしない。
だから病的に峰ちんを想う黒ちんを見てもそれを異常と感じない。
多分、俺が今説明してもさっちん達にはわかってもらえないだろう。
それ程に黒ちんの峰ちんへの愛は静かに深く向けられている。
赤ちんだけは黒ちんの歪みに気づいているけど、なるようになれとしか考えていない。
いや、違う。
赤ちんはわかっているんだ。
今黒ちんから峰ちんを取ったら黒ちんは壊れかけているキセキ達の中で上手く自分を保っていられなくなるって。
赤ちんなりに黒ちんの事を想って口を出さないって事はわかってるけど、俺はそんなに優しくないんだ。

「好きなのはわかるけど、少しは周りを見たら?いつまでも一緒にはいられないよ。」

少し声のトーンを落として真剣な顔で告げれば、黒ちんの顔が険しくなる。

「100歩譲って、紫原君の言うように僕が青峰君だけを好きとしましょう。それで貴方にどう迷惑をかけると言うのですか?」

あまり見ない、どこか自分を嘲るように、だけれども泣き出す手前のような顔をしながら黒ちんは今度こそ俺を拒絶する事を隠さない。
峰ちんがバスケでピタリと黒ちんと一致するなら、おれは性格面でよく一致していた。
何となく言いたい事や思っている事などが不思議とお互いに手に取るようにわかるのだ。
そんな俺に心を許している振りをして本当は苦手だと黒ちんが思っていることなんて知ってた。
知られたくないことまで知られてしまうから苦手で、だからこそ適当な距離を俺に測らせ近付いていることも知っていた。
いつもいつも、黒ちんは無意識に言葉なり態度なりで先手を打ってきた。
俺が黒ちんの中に踏み込み過ぎて、黒ちんの世界を壊さないように。
いつもならそれに従ってそろそろ追求の手をやめてあげるところだけど、今日はそうはしてあげない。

「別に悪くはないけど、峰ちんだけなのはズルいなって思っただけ。」

「意味がわからないです。」

肩を震わせて、それでも敵を牽制するような射ぬくような目で俺を見る。
あぁ、その目が嫌いだ。
全てを拒絶する、その目が。

「峰ちん以外誰一人心の中に入れる気なんかない癖に、みんなに愛想笑いをして傍にいて。峰ちん以外見たくないなら周りを拒絶すればいいのにしないんだから、結構黒ちんも酷いよね。」

「そ、れは…。」

言い当てられたのか黒ちんは黙って俺を睨む。
睨まれた事なんて今まで一度もなかったけど、今の俺は黒ちんにとって他人に知られたくない秘密を暴いた張本人だからね。
ここまで喋ったなら多分前のように心を許されないだろうな。
でももうそれでいい。
黒ちんの中に介入出来るのが傷付ける事しか選択肢がないのなら俺はその道を選ぶよ。

「そんなに峰ちんが大切?そんなに、黒ちんの中の世界を壊されたくないの?」

「止めて下さい、紫原君。」

「止めないよ。」

きっぱりと言い切れば黒ちんは悔しそうな顔をしながらも黙ってしまう。
俺に何も言い返さないのは俺に本当のことを言われたから。
もう嘘さえ通じないってわかってるから、黒ちんは黙るしかない。
そうやって追い詰めたのは俺だってわかっているけれど、でもそれがとても気に入らない。

「なんか、そういうのってムカつく。」

呟いて、目の前にいる黒ちんの左手を掴むと手加減なんかせずに思いっきり腕を引っ張りベッドへと引きあげる。

「――っ!!」

突然の俺の行動についていけるわけもなく、黒ちんはベッドに体を強く打ち付け2、3回浅い咳をする。
俺はそんな黒ちんを心配することなく体を跨いで膝立ちになると、冷めた目で見下ろす。
2人分の重みに絶えきれなかったベッドのスプリングが悲鳴を上げる音で黒ちんはやっと何をされるか理解したのようで青ざめた顔をする。

「む、らさきばら君、やめっ!!」

黒ちんの両手を顔の横に縫い付けるように押さえると、簡単に抵抗を奪う。

「こうすれば良くも悪くも少しは黒ちんの世界に介入できるかな?」

「…本気で怒りますよ。」

掴まれた手で微々たる抵抗を示す。
睨みながらも潤んでいる瞳に罪悪感が頭を過るが気付かないふりをする。
報われない想いを抱いている黒ちん、知ってる?
俺だって結構限界なんだよ。

「怒ってみれば?俺は、やめる気なんて更々ないよ。」

「むっ…んっ!!」

これ以上俺の名前を呼ばれないように、無理矢理黒ちんの言葉を奪う。
重ねた唇から触れあった体温はずっと触れてみたかったもので、触れてしまえば罪悪感なんてものは簡単に吹っ飛んでしまう。
呼吸さえ奪うように深く深く、唇を重ね合わせて。
ベッドに押し付けながら舌を黒ちんの口の中に入れれば鋭い痛みが舌先に走り思わず黒ちんから離れてしまう。

「っ、やってくれるね、黒ちん。」

掴んでいる両手を痛みを与えるように強く握る。
手も足も出さないように上から押さえられている状況で形勢は不利なはずなのに黒ちんは俺を拒絶するように涙目で睨む。

「あなたなんかだいっきらいです。」

息を整えながらもはっきりと言い切られた言葉。
そんなの、前から知ってたよ。
だって黒ちんは峰ちんさえいればいいんだもんね。
ここまでしちゃったんだったら後は何したってダメだよね。
だったらやるだけやってもっと嫌われよう。
そう最低な事を考えられるくらい俺の中で何かの箍が外れた。






熱の籠もった喘ぎ声。
苦しそうに吐かれる吐息。
どれもこれもが俺の欲を刺激する。
少しでも気を緩めれば簡単に意識なんて持ってかれる。
それくらい黒ちんの中は気持ちよかった。

「こう言う風に抱かれるのって、どう?」

暴れられると面倒だったから、頭の上で細い手首を掴んで両手を簡単に拘束した。
それからは黒ちんの抗議や拒絶の言葉を右から左に流し、無理矢理コトを進めた。
服を剥いで、愛撫を施し、俺のもので黒ちんの中をかき回す。
女のように喘ぐ黒ちんに意地の悪い笑みを浮かべながら、律動を激しくする。

「っ、…さ…いて、いですっ、」

声を抑えることも、抵抗することもままならない黒ちんは、涙を流しながら俺を睨む。

「あのさぁ、そう言うのって煽るだけだって知ってる?」

わざと耳元で呟いて、最奥を突いてやれば黒ちんは面白いように体を震わせ声を上げる。

「…やあ、あぁっ、!!」

仰け反って、露になった白い肌をした喉。
それに誘われるように口付け、紅い痣を残す。
明日って体育あったっけ?
あ、その前に部活があったか。
この痕目立つだろうなぁ、なんて他人事のように思いながら名残惜しんで、味わうように痣を舐めれば黒ちんは甘い声を上げる。

「むらさ、きばらくん…やっ、めて、」

「いいの間違えでしょ?」

くすりと笑って、黒ちんのモノに指を絡める。
びくんっと震えるのが可愛くて、つい意地悪してしまう。
絡めた指を巧みに動かしながら黒ちんを見れば顔を赤くしながら耐えていた。
声を出さないよう必死に唇を噛み締めていたけどそれじゃあ何か面白くなくて俺は唇を重ねる。

「んっ、…んぅ!!」

舌で歯列をなぞりながら、ゆっくりと口内を侵していく。
十分に蹂躙すると、奥の方で縮こまっている黒ちんの舌に自分のを絡ませ、更に深く口付ける。

「ぁっ、…ふ、」

逃げるように動き回る黒ちんの舌を捕らえ、軽く甘噛みをする。
それすらも快楽にかわるのか、俺の手の中にある黒ちん自身からは欲が次から次へと溢れてくる。
それを親指で掬い取り、先端に擦り付けるよう強い刺激を与えてやれば呆気なく俺の手の中で果ててしまい、その瞬間に黒ちんは無意識に俺も締め付ける。
予想はしていたが、想像以上の締め付けに俺は眉間に皺を寄せながら耐えた。
これ結構不意打だなぁ。なんて考えながら、俺は漸く黒ちんの唇を解放する。
キスしたまんまだったから、声が聞こえなかったのが少し残念なんだよね。
黒ちんは虚ろな目のまま、荒い息を必死に整えている。
悔しさからか、それとも生理的に出たのかわからないが黒ちんの目からは涙が流れていた。
俺はそれを舌で掬うと黒ちんが辛いとかっていながらも律動を再開する。

「あぅ、ま、…ぁあっ、…き、…つ、ぅあっ!!」

イッたばかりの敏感な体に急激な律動は辛いらしい。
けれど俺はそんなことは気にせず黒ちんの中のイイところを容赦なく攻める。

「テツヤ。」

耳元で名を呼べば、黒ちんは驚いたように目を見開きながら涙を流す。
本当はテツって呼ぼうとしたけどいくら何でも俺はそこまで意地悪じゃないし。
と言うか、そう呼んで峰ちんって認識されるのもなんか嫌だし。
だからあえて名前で呼ぶ。

「や、なま…え、よば…ないっ、んっ…。」

「…呼ばれると困る?」

俺の問いに黒ちんは躊躇いながらも小さくコクンと頷く。

「そ。いいこと聞いた。」

ふっと笑い、俺は黒ちんの腰に手を回すと何の前触れもなくその体を起こす。
勿論繋がったまま。

「っ!!いやあぁぁっ!!」

座っている俺と向き合うように黒ちんがいる。
ただでさえ今まで受け入れていたのでいっぱいいっぱいだったのに、俺が抱き起こしたせいで更に深く繋がって苦しそうに鳴いている。
自分の体重も加算され、黒ちんのそこは俺のモノをより深く銜え込んでいた。

「テツヤ、愛しててるよ。」

「やだっ、よばなっ…い、で。」

泣きじゃくりながらも俺に縋るしかない黒ちんの両足を抱え、その体を上下に揺らす。

「いやっ、あぁっ!!」

悲鳴のような喘ぎ声。
それを聞きながら、俺は意識が朦朧としている黒ちんに囁く。

「愛してるよ。」

「ひっ、…うそっ…つ、あぁっ」

「嘘つき?なにが?」

意外な言葉に俺は黒ちんに聞き返す。
喋りづらいのか2、3度口を開閉させるがそれは音にならない。
多分律動を緩めてあげればいいのたが、そんな気は毛頭なかった。

「っ、あいしてっ、なんか、ぁ、いな…くせに、」

それでも必死に紡いだ黒ちんの言葉に俺は思わず笑みをうかべてしまう。
自分の今の状況がわかっているのかな。
その顔も、言葉も、何もかも男の欲を誘う仕草でしかないのに反抗的な事を言って。
器用なのか不器用なのかわからなくなる。
と言うかもっと泣かせたくなる。

「黒ちんだけを、愛してるよ。」

優しく甘い声で囁いて、いつもの呼び名で呼んで。
今黒ちんを抱いてるのは俺だとわからせながら黒ちんの最奥を突く。

「っ、ぅあぁぁぁっ!!」

甲高い声をあげ、黒ちんはそのまま果てる。
その時ちょうど内部を締め付けられ、俺も黒ちんの中に全てを吐き出した。






換気の為に開けた窓から入る空気はまだ少し肌寒さを残しているけど風邪を引く程でもない。
ベッドの横にある窓から空を見上げれば暗い夜空に浮かぶ月。
静かに存在を主張するその姿は黒ちんを彷彿とさせるから見ていて飽きる事はない。

「んっ、」

声のした方を向けば、窓から差し込む月の光を受けながら黒ちんが無防備な姿で眠っていた。
あれから黒ちんが意識を手放さないのをいいことに何度か事に及んで、気が付いたら黒ちんは意識をとばしていた。
反省をちょっとしながらとりあえず後始末をして、パジャマを着せてまたベットに寝かせたのだけど相当疲れていたようでそれらをしている間は1度も起きる気配なんてなかった。

「…だめだなぁ。」

呟いて、ため息を吐く。
本当はこんなことするつもりなんてなかった。
ただちょっと、少しだけでいいからこっちを見て貰いたかっただけだ。
だけど黒ちんがあまりにも峰ちんに拘るからムカついた。
まぁ黒ちんのことだから、明日もいつも通り普通に接してくれると思う。
だってそう言う子だから。

『っ、あいしてっ、なんか、ぁ、いな…くせに、』

突然思い出した最中に告げられた言葉。
そんな事は決してない。
ちゃんと好きだし、愛してる。
けれど黒ちんはそれを信じなかった。
峰ちんが振り向かないからって他人の愛まで否定しないでほしい。

「ねぇ黒ちん、あの言葉は嘘に聞こえたんでしょ?」

起きないとわかっていて、それでも問い掛けるのは答えが欲しいから?
それとも、もう一度面と向かって拒絶されるのが怖いから?
答えが出ている問いを無視すると俺は色素の薄い髪をゆっくりと撫でる。
まるで愛おしむかのように。

「いつかは本気だって信じてくれる?」

やり方は間違えたけれど、黒ちんの事が好きなのは本当なんだ。
両思い、とまではいかないけれどいつかはこの気持ちが少しでも伝わればいいのにと思いながら手の中で弄ぶ髪に恭しくキスを送ると、眠っている黒ちんの頭をくしゃりと撫でた。




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