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「黒子っちが好きだよ。」

「寝言は寝てから言って下さい。」

「そう言う素っ気ないところも好き。」

にこにこ笑いながら言う黄瀬を見ながら黒子は重苦しいため息をはく。

「僕は火神君が好きです。」

笑っている黄瀬の目をしっかり見ながら黒子が言っても黄瀬の表情は崩れない。
むしろ面白いとばかりに笑みが深くなる。

「それでも黒子っちが好きだよ。」

囁く言葉は愛の言葉なのに、黒子にはどうしてもそうは聞こえなかった。
黄瀬の笑みにも言葉にも何か重苦しいものが付きまとっている。

「俺には黒子っちが必要なんだ。」

「バスケをしている、と言う前提ですよね。」

「まぁね。だけど必要なことには変わりないよ。」

にこやかに微笑んで告げられる言葉は黒子の心に響くもの。
今まで存在があやふやで、誰にも必要とされなかった黒子には甘美な言葉。
中学時代は少なからずともそれに流されてしまっていた。
例えどんな理由であろうと存在を求められるのは嬉しかったから、黄瀬の言葉や態度を全て受け入れてその身を捧げた。
だけど心のどこかでは黄瀬との関係に疑問を持ち、断ち切りたいと考えることもあったがそれを実行できることはなかった。
だから卒業を期にその歪んだ想いから抜けだした。
もう黄瀬に振り回されることはなく、自分の想いをしっかりと貫こうと考えていた。
なのに黄瀬はまた黒子の前に現れた。
そしてその存在を必要とした。

「俺と一緒にいてよ。」

「貴方とはもう終わりました。」

言えば黄瀬は黒子との距離を一気に積めてくる。
驚いて黒子が離れようとする前に両腕を捉え、妖しく笑う。
そしてそのまま唇を奪う。

「ん、っ、」

重ねるだけものから奪うものへと変わっていく。
黄瀬は黒子の唇を一度だけ舌で舐めるとそのまま唇の中へと侵入する。
無理矢理こじ開けた口内へ遠慮なく侵入をすると歯列をなぞり黒子の舌と自分の舌を絡める。
離れようとしても両腕は塞がれてしまっているので離れることは出来ない。
ぞくりと悪寒のようなものが黒子の背を駆けるが深い口付けに思考が全て奪われる。
幾分かして満足したのか、黄瀬は黒子の唇をぺろりと軽く舐めながらやっと離れる。
久しくしていなかった濃厚なキスに黒子は息を荒くしながら、不覚にも黄瀬の方に倒れ込む。
黄瀬から離れたくてふらつく足に叱咤をするが立っているだけしか出来ない。
そんな自分の状況に黒子は舌打ちをつきたい気分になる。
それがわかっているのか黄瀬は微笑んで黒子の顎をとり、自分の方へと向かせる。

「俺以上に黒子っちを必要としているやつなんていないっスよ。」

はっきりと言い切るその言葉に黒子の瞳が揺れる。
声が、笑顔が、黒子の全てを侵蝕していく。

(助けて下さい、火神君。)

心の中で呟いたって届きはしない。
そんな事わかっているけれど黒子は呟かずにいられなかった。

「ねぇ、もう一度俺の手を取ってよ。」

迫ってくる黄瀬の顔。
その顔は黒子以外には絶対に見せない黒い笑み。
底が知れない、黄瀬の本性。
結局、逃げ切ることなんて出来ないのか。
黒子がそう考えていれば黄瀬が段々と近付いてくる。
それを拒むことができないことに悔しさを感じながら唇を触れ合わす。

(か、がみ、くん、)

脳裏にはいつものように好戦的な笑みを浮かべる火神を思い出しながら、黒子は小さな抵抗をするかの様に一筋の涙を流した。



END




》黄瀬の愛はべらぼうに重くて狡賢いといいなぁと思ったらこんなものが出来上がりました
》黄瀬を一方的に貶す黒子も好きだけど黄瀬に精神的に追い詰められる黒子も好き







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あきゅろす。
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