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望むなら、なんでも。

─whatever─

(お前にとって俺ってなんなんだろ…)

ふと頭を過ぎる疑問。

もう、キスもした。
何度も、身体も重ねた。
それでも、明確な言葉を、貰ったことがある訳じゃない。

友達じゃない。
恋人じゃない。
…なら、セフレか?

行き着く先のない答えは、いつだって都合のいい思考には繋がらない。

友達じゃない。
恋人じゃない。

(俺ってお前のなんなんだよ…)

そうして曖昧なままの関係は、シゲの関西選抜の一件を境に、進展することも、後退することもなく、停滞したままだった。 そんなある日。

「京都の高校、決まってん」

「そ…、なんだ…。…よかったな」

お前でも入れてくれるとこあるんだ、なんて悪態をつけば、失礼な奴やな、と機嫌よく笑われた。

俺も武蔵野森に決まってたし、シゲが京都に行くのも、殆ど分かってた。

でも、いざ目の前に叩きつけられると。

行かないで、なんて言えない。そんな権利も義理もない。

サッカーやってれば会えるから良いなんて割り切れる訳でもない。
少なくとも、俺には無理だ。

「…で、ここ出てくんやけど」

淡々と「ここを出て」って。
ここっていうのはもちろ ん草晴寺の一室。シゲにあてがわれた部屋。

此処で、キスして、セックスして。

…俺は、シゲに恋をした。

「向こうにあんまもの持って行きたないねん。で、もし、たつぼんがなんか欲しいもんあるなら」

…欲しいもの…?

「なんでも持ってってや」

にかっ、と歯を出して、屈託なく笑う。

「たつぼんが欲しいもんならなんでも持ってってええで…、」

…なんでも…?

俺が、欲しいもの、なんでもくれる、なんて。
頭が白くなる。ほぼ無意識。それ故、本能だ。

成樹の第2ボタンまで外れたシャツの胸倉を引いて、口付け た。

深く、深く、角度を変えて、何度も。

唇を割り開いて、歯列をなぞる。
触れた舌先を、絡めて、吸って、また絡めて。

俺が望むもの何でもくれるんだろ?

だったら、お前を、くれよ。

それが、俺の、望むもの。



深くなった口付けを放すと、二人の間を鈍く光る、糸が繋ぐ。

「…なんでも、くれるんだろ?」

荒くなった息を継いで、睨むように成樹を見つめる。

どうせ手に入らないなら、木っ端微塵になって欲しいから。

唇を噛み締める。
蹴りをつけるんだって。そうしたのに、もう揺らぎそうで。

「…っ」
シゲが動いたと思ったら、どさっ、という音と、背中に鈍い痛み。
気付けば、シゲに押し倒される形。

「やるで。お前の望むもんなんでも。…けど、」

口の端を、吊り上げて。ああ、悪い顔だ。

「それだけやったらフェアやないやん?」

息がかかるほど近付く顔に、身動ぎすらも許されない。
ただすべてが成樹に意識を集中させる。


「せやから」


俺の、望むもの、すべて。


「くれるやろ?」


お前が望むなら、なんでも。

俺が望むもの、なんでも。


END.


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