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『もっと甘えてもいいんだよ?』





「久我先生おはようございます」

「ん、おはよう」

学校に登校すると、丁度入口の門の所で嘉藤と遭遇した。

「ココ、髪ハネてますよ」

「ちょっ、近すぎっ!」
寝癖を直そうと嘉藤が俺の髪をいじる。
が、ニコニコと笑顔で密着してくる。
ここは学校、誰が見ているかも分からないのにこんな密着している俺達を見たら不自然に思われるだろう。

「離れろっ」
俺は周りを気にしながら嘉藤を引き剥がす。

「冷たいですね〜」
少しいじけた顔をするが全然可愛いくない。
だってコイツはどちらかと言うとカッコいいという言葉の方が似合うからだ。


嘉藤忍(かとうしのぶ)

24歳にして生徒や保護者からも人気なイケメン高校教師。

カッコ良くて、面白くて、爽やかで、男女問わず生徒達からも信頼されている完璧君。

俺はと言うと口は悪いし、生徒からもナメられた口調で話しかけられるし…。
この差は何なんだ?
たった3コしか変わらないのに同じ教師として全く立場が違う。

ぶっちゃけ悔しい――…
俺の方がこの学校長いのに


「今日、久しぶりに一緒に帰りません?」

「…―別にいいけど」

でもって、俺達は恋人同士だったりする。













四限目が終わりチャイムが鳴ると俺は授業を終え職員室に戻る。


ハァ―…。
アイツら俺の授業全く聞く気がねぇ。
嘉藤の授業では真剣に聞いてやがるのに。
完全ナメられている――。

こうなったら、今度の期末テストで難易度の高い問題集にしてやるっ!!


―ガラッ―

職員室に入り自分の席に着く。
すると、何やら賑やかな声がしたのでそちらを見てみると女子生徒に囲まれている嘉藤の姿があった。

「嘉藤先生〜、これ調理自習で作ったの!食べて〜」

「私もー!!」

見てみると、可愛いくラッピングされた中にマフィンが入っていた。
どうりで甘い香りがすると思った。

「ゴメン、先生甘いの苦手なんだ」
悪そうに生徒達に謝る嘉藤。

「えぇー、少しでもいいから食べて下さ〜い」
彼女達は悲しそうな表情を浮かべながらも嘉藤に渡す

「気持ちは嬉しいけど、ゴメンね」

優しく微笑んで彼女達をなだめる。
そんな光景毎日見てる俺は少し苛立ちを隠せなかった。

「せっかく作ってくれたんですから頂いたらいいんじゃないですか嘉藤先生」

「久我先生…?」
俺の登場に驚いたのか、慌てて椅子から立ち上がった。
今からお昼の時間。
いつもなら、一緒に食べましょうと嘉藤から誘ってくるのに、生徒達の邪魔が入って中々食べに行けない。

でも、そんな理由で言ったわけじゃない。

ただの、――…嫉妬だ。
女子生徒に嫉妬するなんてみっともないのに…。

そんな姿を見られるのが嫌で、突っかかった台詞しか出なかった。

「じゃあ、俺はご飯食べて来ますので」

作り笑いをして、俺はその場から逃げるように出た。












「ちょっと、俊哉(としやさん)」
後ろから嘉藤が俺を追いかけて来た。

「いいのかよ、生徒放っておいて。てか、学校で下の名前呼ぶなよ」

本当は追っかけてくれて嬉しいはずなのに、素直になれない俺は冷たい言葉で言い返してしまう。

「すみません…つい。」

別に謝らせるために言ったんじゃない。
俺が子供みたいな嫉妬をしたから―…。
嘉藤は全然悪くないのに。

「いいよ、今日は俺一人で食うから」

付き合いだして、いつも一緒に食べているのに俺は心にも無い言葉で突っ返してしまった。

「え?一緒に食べましょうよ?」
嘉藤がオロオロとした表情を見せる。

「彼女達と食べれば?」

「彼女達?」

「さっきの生徒達だよ。いつも生徒から貰ったモノ受け取らないだろ?理由つけて」

そう、嘉藤は生徒達から毎日のようにお菓子やらプレゼントやら貰うのに受け取った事が無い。

いらないから。

だってさ。
せっかくお前にあげたくて持って来てるのに、好きな人からしか受け取らないんだって。
マジもったいねーよ。


「だから、お詫びに一緒に飯でも食ってやれ―…」

言葉を続けたかったが、嘉藤の顔を見ると言葉が出なかった。

「それ、本気で言ってます?」

嘉藤の顔が真顔になる。
いや、少し怒っているようにも見える。

「なっ、何だよ急に…」

そんな顔見た事ないから俺は焦った。
もしかして、本気で怒らせたのかもしれない。

「…俺、久我先生の事が分からなくなってきました」


――… え?


「職員室に戻りますね」

感情の入って無い言葉で返すと嘉藤は背を向けて行ってしまった。


…―んでっ、何でお前が怒るんだよ?
怒りたいのは俺の方なのに

いや、ただ俺が素直になれないからだ。
こんなんじゃ、いつか見捨てられる……よな。

明日―…、謝ろう。

















―翌日―


「よしっ」
俺は気合いを入れて学校に向かう。
怒らせてしまったお詫びにお弁当を作ってみた。
慣れない料理で味は保証ないけど、精一杯の俺の気持ちを込めて作った弁当。


食べてくれるかな―…













お昼になり嘉藤の席の方へ移動する。
朝から一言も喋ってない。気まずい雰囲気で話かける事も出来ないし、向こうからも話かけては来なかった。

俺は勇気を出して名前を呼ぼうとした。

「―…嘉」

「嘉藤せんせぇ〜」

俺が呼ぶ前に女子生徒が嘉藤の名前を呼んだ。

「どうしたんだ?」
笑顔で返す嘉藤に生徒は顔を赤くして何かを差し出した。

「これ、先生に作って来たの!美味しいか分からないけど食べて下さい」

差し出したのは、お弁当だった。

「君が作ったの?」

「はい。先生甘いの苦手って聞いたからお弁当なら大丈夫かなと思って…」

「そっか。ありがとう」
とびきりの笑顔を生徒に向けると、その生徒の頭を優しく撫でた。

そんな光景を見ているのが凄く嫌だった。
普段はそんな事しないのに何でだよっ―…。

目の前で俺が見てるのに









「わっ!く、久我先生!?」
気がついたら無理矢理、嘉藤の腕を引っ張って職員室から出ていた。

強く引っ張ってたどり着いた場所は屋上だった。


「一体何ですか?腕痛いんで離してくれません?」

冷たい言葉に視線。
いつも言わない台詞が今日はやけに沢山聞く。

「そっ、その…」
無理矢理連れて着たのはいいが、何から話せばいいのやら…。

「喋らないなら俺帰りますよ?お腹空いてますし」

「あっ、あの――」
恥ずかしさで顔を上げられない俺は作ってきた弁当を嘉藤に差し出した。

「何です?」

「いっ、いや…、腹減ったならこれ食っていいから…」

言葉が上手く出ない。

素直に、お前の為に作って来たんだ。

そんな簡単な言葉が出せない―…。


「いいですよ。それ久我先生のでしょ?俺自分で買って来た弁当ありますから」

それだけ言うと、また昨日みたいに背を向け屋上から出て行こうとした。



「まっ、待てよ!!」

「まだ何か?」

「き、―…昨日はゴメン」
俺は頭を下げて謝った。

「…え?」

「本当は俺、生徒に嫉妬してたんだ。」
素直な気持ちを嘉藤に伝える。

「いつも女子から囲まれて、笑顔を振り撒いて…。それに嫉妬して…あんな事言っちまったんだ…」

思っていた事を嘉藤にさらけ出す。
自分の本当の気持ちを知ってもらいたいから――。


「…ゴメンな」

そう言うと、嘉藤が優しく抱きしめた。

「いいですよ、分かってますから」

「…え?」

「あなたが素直じゃないって事ぐらい。」


――嘉藤。


「だけど、少しは素直に言ってくれたら嬉しいんですけどね?」
と、苦笑いで言った。

「ゴメン」

「でも、嫉妬してくれるなんて俺の事ちゃんと好いててくれてたんですね」

「当たり前だろっ!!好きじゃなきゃ嫉妬なんて―…」

言い終わる前に嘉藤に唇を塞がれた。

「嬉しいです。その言葉が聞けて」

「…んぅっ、嘉…藤っ」

「俺も不安なんですよ?好かれてないんじゃないかって」


知らなかった。
嘉藤がそんな風に思ってたなんて。

「だから、もっと甘えて下さい。」

「…うん」
俺は照れながらも嘉藤に抱き付いた。

「俺に頼ってほしいし、甘えてもらいたいです」

「分かった」
甘えるなんて恥ずかしい事だと思っていたが、好きな人の前ではそんな姿見せてもいいんだよな。
何で俺は、いつも突っかかる事だけしか出来なかったんだろう。

嘉藤はそんな俺でも大切にしてくれていたのに。

「でも、まぁ素直じゃない俊哉さんも可愛いですが」

「だっ、誰が可愛いだっ!」

「けど、ベッドの中ではもっと素直になってくれたら嬉しいかな♪なーんて」

「バカッ!!」
前言撤回。
素直になった俺がバカだった!

「嘘ですよ!怒んないで下さ〜い」
俺は嘉藤を無視して屋上から出ようとした。

「それに俊哉さんからの愛妻弁当も作ってもらえたし」

「愛妻弁当じゃねぇ!!」

「でも、俺のために作ってくれたんでしょ?」

顔を覗き込んで確認してくる嘉藤。
いつもなら、ここでぶん殴ってやりたい所だが素直になるって決めたんだ。

「うっ、うっせぇーな!そうだよ、悪いかっ!!」

あぁ、やっぱり上手く素直になれない。
そんな自分が哀れに見える…。

「全然悪くないですよ。嬉しいです。ありがとう俊哉さん」

「…べっ、別に。おっ、お前が喜んでくれたら嬉しいから…」

うわぁー、やっぱり恥ずかしいぜ!

「もうっ、可愛い!!」

「うわっ、バカ!何しやがるッ!!」

「我慢出来ません!!ここで襲っちゃいます」

「アホか!ここ学校―…って、んぅ…っ、忍…」

濃厚なキスをしてくると、そのままシャツ越しから乳首を弄られる。

「こーゆう時の俊哉さんが一番素直だね」

「る、るせぇ…っ!…って、バカ…もぅ、やめっ…」

「ふふ、可愛い。素直な俊哉さんも素直じゃない俊哉さんも、どっちも好きですよ」








素直になるのもいいかもな。
だって、素直になれた分
愛が深まっていくから――




END

2011.4.18


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