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『追憶』

バレンタイン小説です!






















「HR始めるぞー」


「だよなー」

「あー明日貰えるかな〜」

俺が入って来た事にも気付かずペチャクチャと喋りやがるコイツら。
いつもの風景だが、こう毎日だと苛々する。

「名前呼ばれて返事しなかった奴は欠席扱いね〜。ついでに自分の席に座ってない奴もね〜」

「はぁ!?ふざけんなよっ」
俺の言葉にキレた生徒が椅子から立ち上がる。

「笹木か。先生に対して言葉使いが悪いので欠席と…」
出席簿に欠席のマークを付けるふりをする。

「マジ怒るよ歩ちゃん」

「だったら自分の席に着け。」

「…ったく、ちょっとバレンタインの話してただけなのに」

「バレンタイン?」

笹木は自分の席に着くと頬杖をつき話出した。

「明日14日だろ?だからチョコ貰えるか話してたの」

なるほど。
明日はバレンタインか。
でも男子校じゃ貰えないだろ。
周りは男ばかりだし。





「俺もチョコ欲しいなぁ〜」

そう口に出したのは瀬川だった。
一番後ろの窓際に座っている瀬川は俺を見ながらニヤニヤしている。

「……名前呼ばれたら返事しろよ」

目線を逸らし出席簿に目をやる。
あれは間違い無く俺に言っている。
明日のバレンタインチョコをあげろと。

でも俺は男だぜ?
男の俺がチョコを買ってる姿なんか恥ずかしいだけだろう!
いやいや、絶対買わない!


「ちなみに、市販のチョコはイヤだからね☆もちろん手作りチョコでハート型♪」


瀬川……。

周りの生徒達が俺を見ている。
俺達の関係を知ってるコイツらは、俺に向けて発しているって思っているんだろう。
確かにそうだけど、ここで言わなくてもいいだろっ!!


「朝から見せ付けんなよ〜」

「あー、あちぃ、あちぃ〜」

小声で周りの奴らが野次を飛ばす。

うるさいわっ、ボケ!
こっちの方がどうにかしてほしいと言うのに。

出席確認をサッサと済ませると俺は教室を出ようとした。


「明日楽しみにしてるからね」

背後から肩を掴まれる。
その犯人が分かっているので振り向かない。
いや、振り向きたく無い。

それだけを言うと瀬川は気分が良さそうに自分の席へと戻って行った。




強制か?
作らなかったら恐ろしい事が待っていそうだ……。


確かにバレンタインは好きな人にあげる物だけど、瀬川は俺から貰って嬉しいのか。
―…嬉しいから言ってんのか。
でも、チョコなんて作った事人生の中で一回も無いし。
それが普通なんだと思うけどさ。
しかもハート型?
って事は、型抜きも買えってことかよっ!!
無理無理っ!!
そんなのを買ってる男がいたら引くぞ?絶対。

もうっ!!考えるのも面倒くさいっ!
市販のハート型のチョコを買っとけばいいだろ!
そうそう、それでいいんだよっ!はい、決まり!































何が決まりだよ俺。

そんな事言いながら、ちゃっかりと板チョコとハート型の型抜き買ってんじゃんっ!!

「…瀬川に出会ってから、ちょっと俺、壊れてきてる気がするんだけど…気のせいか?」

学校の帰りにスーパーでチョコを買いだめし100均一で型抜きや機材など購入し只今、台所でチョコと睨めっこ中。

で、チョコってどうやって溶かすんだよ?
レンジ?レンジでいいんだろ?

皿にチョコを置きレンジに入れようとしたら、携帯の音が鳴った。
作業を一旦中断し携帯を取り確認する。



『ちゃんと作ってる?歩ちゃん料理下手そうだからサイトで調べた方がいいよ☆じゃあ、明日学校でね〜』


パタン!!
読み終わると携帯を直ぐに閉じた。

調べた方がいいよ?
一々、調べて上手に作れと!?
っんな、面倒くせぇー事出来るかよっ!!
もうすぐでテストも近いから作んなきゃいけねーって言うのにっ!!

やってられるかよ。

コタツに入って気持ちを落ち着かせる。
しかし、手に持っている携帯は無意識にボタンを押していた。


『バレンタインチョコの作り方』


「うわっ!!いつの間に?」
知らず知らず、サイトに接続していた。


仕方ないので観てみる事にした。
何で男の俺がこんな事を…



「スゲーなぁ。旨そう」

チョコの作り方が載っているサイトを観てみると、とても美味しそうなチョコが沢山映っていた。

あの学校が共学だったら女子の生徒からチョコ貰えたりしたのかもな〜。
昔は結構貰ってたのにな。
はぁ…、取り敢えず作り方観てみるか。
面倒くせぇーけど。
































―翌日―


「…はぁ。学校行きたくねぇ」

昨夜、何とかサイトの作り方のお陰でチョコを作り終えた。
が、これをどうやって瀬川に渡せばいいんだ?
やっぱり学校終わってからがいいよな。
周りに色々言われたくも無いし。

よしっ!放課後に渡そう!
















「隣の女子校からチョコ貰えね〜かぁ」

「バーカ!無理だろ。」

「だよな〜」

「はーい、HR始めるぞ」
教室に入ると案の定、皆バレンタインのチョコの話しをしていた。
こんな時、男子校と言うのは寂しいものだ。

「歩ちゃん、チョコは?」

早速、瀬川はニコニコな笑顔で俺に話しかけてきた。
その様子に、周りの生徒達も面白そうに耳を傾ける。

だから、一々コイツらの前で言わなくていいだろう!
見てみろよ。このニヤニヤした意地悪そうで楽しんでる顔を!

「今は授業中だぞ。静かに」

今ここでチョコの話しはしたくない。
奴らの面白いネタになるだけだ。
それに、手作りチョコを作ってハート型にしたのを見られたくない!恥ずかしすぎるっ!!


「何ソレ?マジつまんないんだけど」

瀬川の表情が一変して、冷たい顔になる。
俺と目も合わせようともしない。

そんなにキレる事かよ?
この場所で、後で渡すから。なんて言えないだろ!
コイツらがいるんだから。
本気でキレる理由が分からない。
















放課後になり、帰りのHRを終わらせると瀬川を呼んだ。

「瀬川」

「何?」
低い声に目付きも悪い。

「いいから来いよ」

渋々ながらも瀬川は俺の後を着いて来た。

着いた場所は屋上。
ここなら一目につかないし安心だ。



「…おっ、お前が作れっていっ、言ったから!」

いざ、渡すと恥ずかしさより勇気がいる。
チョコを差し出すと瀬川は黙ったままだった。

「何で今?」

は?

「朝渡せば良かったじゃん」

「周りがいるのに渡せるわけねーだろ?」

「皆の前で渡すのがそんなにイヤなんだ?」

「ちがっ!アイツらがおちょくって来るのを分かってて渡せないだろう」

そんな事、瀬川だって分かってるだろうに。

すると、差し出したチョコを瀬川がゆっくり受け取った。


「へぇ〜。本当に手作りだ」

「お前が言ったんだろっ!!」
恥ずかしいから早く直せよ!

「嬉しい。ありがとう歩ちゃん」

さっきまで怒ってたクセにコロッと笑顔に変わると俺を抱き締めた。

「朝、話し逸らされた時チョコ作ってくれてないのかなってショックだったんだ。」

そうだったのか…。

「歩ちゃんってプライド高いし、何で俺が作んなきゃとか思ってそうだったしね」


…――大当たりだ。


「手作りなんて冗談で言ったんだけど本当に作って来たから笑っちゃうね!」

アハハ!と俺の肩で笑う。
冗談って――おいっ!
めっちゃ本気で言ってたじゃねーか!
こっちは恥ずかしい思いしながら買って、お前に言われた通り作り方も調べて、一番上手く作れたやつを持って来てやったんだぞっ!!
それを冗談だなんて許せん!!




フルフルと怒りに震える俺から瀬川が離れていった。


「食べていい?」

「……あぁ」

瀬川は嬉しそうにラッピングされた袋を開け中からハート型のチョコを取り出す。


「ラッピングまでしたの?歩ちゃんウケる!」

またもやゲラゲラ笑い声を上げる。

たまたま、調べたサイトにラッピングの仕方まで書いてあったのでしてみただけの事。
俺にも出来そうな簡単なラッピングだったから。

そんな好意までコイツは笑いものにしやがって!


「笑うなら食うなっ!!」

瀬川が持っているチョコを奪い返そうとしたら軽く避けられた。

「ダメだよ。まだ食べてないのに」

チョコを口に含み歯で噛むとパリッと音がした。

「美味しいよ、歩ちゃんが作ってくれたチョコ」

そんな笑顔で言われると何も言い返せない。

「歩ちゃんも食べてみる?」

「…えっ!ちょっ…せがっ」

瀬川が食べていた一口サイズのチョコをそのまま口移しで食べさせられる。


「…ンッ…ぅ」

チョコと一緒に瀬川の舌まで口内に侵入してくる。

「ホラ、ちゃんと食べて」

「…ぁっ…ンッ」

俺の口の中にチョコが全部入りきると瀬川の唇が離れて行った。

「どう、美味しかった?」
舌を出してペロッと唇を舐める。
その仕草がイヤラシしくて俺の顔は赤く染まった。

「…なっ何するんだ…バカ」
変な気分になってしまった俺はこの場を去ろうとしたら腕を掴まれた。

「もう1つ貰ってないよ」

もう1つ?

「歩ちゃんを」

「…なっ、な!!」

掴まれた腕を引っ張られ再び瀬川に引き寄せられる。

「一番のメインディッシュでしょ」

瀬川は楽しそうに俺の胸をまさる。

「やっ、…やめろ!!」

「あぁ、屋上だと寒いもんね。場所移動しよっか♪」

「そーゆう意味じゃねぇ!!」

このままだと喰われてしまうっ!!
に、逃げなきゃ!


「逃がさないぜ?」

俺の心を読んだのか瀬川は言った。

「ホワイトデーはたっぷりお返し、してあげるね歩ちゃん!」

いいっ!!しなくていいっ!!
その笑顔の裏にはとんでも無い事が待っていると思うから!
その前に、瀬川をどうにかしないと!


「学校が嫌なら歩ちゃん家でもいいよ?沢山声出しても平気だしね」

クスクスと笑う瀬川に懸命に逃げ出そうとするが上手くいかない。

「そんなに暴れるならここで犯すよ」

その顔が本気なので暴れるのを止めた。


一生懸命作ったのに、メインディッシュが俺って何だよっ――!!

高校生のクセにエロガキめっ!!


「エロいのは歩ちゃんもでしょ?だって、もう膨らんで来てるし」

「…あっ、…やぁッ」

下半身を触られ身体が勝手に反応する。

てか、どうして俺の考えてる事が分かるんだよっ!

もう、バレンタインなんか大嫌いだっ――!!






















END













―後書き―

この後の続きを書く力が無くここで断念してしまいました(^o^;
歩ちゃん家に行って瀬川に美味しく食べられたらいいと思います!(笑)

ここまで読んで頂いてありがとうございました!!

2012 2.12




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