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『俺にしなよ』









「まだするの?」

「だって和也まだ萎えてないじゃん♪」

「……健斗のバカ」

恥ずかしそうに照れる和也はマジで可愛い。

恋人になって1ヶ月。
親友だった和也を好きになり俺は意を決して告白した。
まさかOKの返事をもらえるとは思っていなかったので驚きと喜びでいっぱいだ。

「あと一回だけだからねっ」
顔をりんごのように真っ赤にした和也を抱き締め再びベッドに押し倒した。

「好きだよ和也」

「うん…僕も好き」


















チュンチュン――


朝、目覚めると横にいたはずの和也の姿がない。

「和也〜?」
眠たい目を擦りながら辺りを見回す。

トイレでも行ってるのかな?

俺は起き上がってリビングに向かった。
和也は一人暮らしなのでよくお邪魔させてもらっている。
だから、間取りや物の場所も把握しているのだ。


「あれ」
リビングに行くとソファーに座ってテレビを見ている和也がいた。

「そこに居たなら言えよ」
俺は背中を向けている和也に近付く。
それにしても返事が無い。


昨日のエッチで身体がキツいんだろうか。
そう思って横に座った。


「なぁ、和也が焼いたホットケーキ食べたいんだけど」

和也は料理も上手い。
朝はホットケーキを焼いて俺を起こしに来るんだが…やっぱり疲れてるんだろうな。


「…ホットケーキ?」

「うん。作ってよ」
俺が笑顔で答えても顔も合わさない和也。


ちょっと、おかしい――


「は?何で俺が作んなきゃいけねーの。テメーで作れよ」

「!!」

今まで和也からこんな口調を聞いた事があるだろうか。
僕が俺になってるし、そんな汚ない言葉使いなんて一度も無かった。

まるで別人だ。



「おいっ!和也っ!!」
目も合わせようとしない和也に俺は無理矢理こちらを向かせるように肩を掴んだ。

「痛ぇーな!」

俺の手を払う。
すると、あの可愛いかった顔が俺を凄い目付きで睨んでいる。

「か、和也?」

本当に和也なのか―…?
顔が同じでも全然違う。


「和也、和也ってうるせーな。俺は刹那って言うんだよ。ちなみに16歳ね」

刹那っ!?
意味が分からない。
この状況をどう整理しろと言うんだ?

「お前は和也だろ!?」

「刹那って言ってんだろ。和也は今眠ってるよ」

「…―は?」

テーブルに置いてあった俺の煙草に手を伸ばそうとした。

「やめろ!お前タバコ嫌いじゃねーかよ!」
和也から煙草を奪い取った。

「そんなに和也が心配?」

「あ、当たり前だろ…」

「昨日あんなに激しく抱いといて。お陰で俺まで身体がガタガタ」

コイツの言っている意味が理解出来ない。
身体がガタガタって、当たり前じゃないか。
自分の身体なんだし。


「言っとくけど、和也は和也でも今は俺なの。分かる?」

「分かるか」
分かりたくもない。
こんな和也、和也なんかじゃない!
俺が好きだった和也を返せ!


「お前、頭悪いのな。一般で言う二重人格ってやつだよ」

「二重人格?」

高校に入ってから和也と出会い今に至る。
もう3年目にも突入するというのに、そんな素振り見せた事も無かった。

和也がこんな悪ふざけする性格じゃないって俺はよく知っている。

本当に二重人格?

「やっと分かったみてーだな。たまにフッて代わるんだよ」

「嘘だろ……」

「嘘ついてどーすんの?」
和也は、いや刹那と言う奴はソファーから立ち上がった。

「アンタさ、無茶し過ぎなんだよね。こっちの身にもなってみろよ。このダルさ」

身体が痛いのか腰を擦っている。

「まぁ、代わったのは朝だから良かったけど。最中とか絶対代わりたくないな。一度もねーけどさ」

腰を擦り終わると俺の前に立ちふさがる。

「何だよっ」

「フーン。カッコいいねアンタ」

褒められてるんだろうか。
嬉しくないが。


「アンタもさ、和也の気持ちになったら分かるよ」



ガタンッ――



「何してっ!?」
イキナリ、ソファーに押し倒され唖然とする。

「和也に犯されるのも悪くないかもよ?ま、今は俺なんだけどね〜」

刹那は舌を出して自分の唇を舐めた。
その行動が怖くて身体が動けなかった。

和也の顔なのに怖い。



「たまにはさ抱かれる側もいいんじゃない?って、俺抱かれるの嫌いだし」

「おいっ!冗談はよせっ」

俺よりも腕力が弱いはずなのに掴まれた腕は動かない。

「冗談じゃないよ。俺だって溜まってんだ。恨むなら和也に言えよ」

ふざけるなっ!!
何で和也に犯されなきゃいけないんだ!
人格は刹那だけど。

「離せっ!!」

「やーだ」

























「…っあ、ぁぁ…っ!!」

「いい声で鳴くじゃん♪思ってたより感度もいいし」

夢だろ?
夢であってほしい―…。
和也の身体、顔、声で犯されている。

アナルを和也のペニスでガンガンに突かれて感じまくっている俺。

嫌だ。考えたくもない!


「アンタ、ネコの方が合ってんじゃない?」

「っ…わけ、あるか…っ」

俺がネコ!?
ふざけた事言いやがって!
抱きたいと思っても抱かれたいとは死んでも思わない


「だってホラ、もうこんなにグチョグチョだしさ」

「…ンッ…ぁぁっ!!」

ペニスで中を掻き回される。

「女みたいに濡れてる」

うるさい。うるさい。
和也の身体を使ってこんな事するなんて許せねー!!


「可愛がってあげるぜ」

「ひゃあァ―…っぁ!?」

更に中を突いてくる。
もうイキそうな俺は唇を噛んで耐えた。

「たっぷりお前の中に出してやるよ」

「やめぇ―……っ!!」
































「…ん?」

目覚めると、ソファーの上だった。

「健斗っ!?大丈夫!?」

目を潤ませ俺を心配そうに覗き込む和也。

「…和也?」

起き上がろうとしたら身体中に激痛が走った。


夢じゃなかった?


「ずっと、うなされてたから心配だったんだよ?」

和也は涙を溜めながら俺に抱き付いた。

「ゴメンな心配させて」
抱き付いて来た和也の頭を撫でる。

「僕も目が覚めたらソファーにいたんだ。ベッドで寝ていたはずなのに」

健斗は刹那の事を知らないのか?

「僕たまに記憶が無くなる時があるんだ」

「本当か?」

うん、と頷く和也。

「気付いたら、お酒飲んでたりとか知らない場所にいたりとか。おかしいよね」

「おかしくないさ」

不安な顔を浮かべる和也を抱き締め返した。

記憶が無い時は刹那が表に出ているのかもしれない。
まさか、こんな事になろうとは…―。



「何かあったら直ぐ呼べ。駆け付けてやるから」

「ありがとう健斗。健斗が僕の恋人で良かった」

嬉しそうな表情をする和也に俺は優しいキスをした。














月日は流れて、あれから刹那が出て来ることは無かった。
和也も記憶が無くならないと言っていたし安心だ。



「凄い雨だね今日」

「そうだな」
学校が終わり、和也の家に着くと急に雨が降り出した。
強風に雷も鳴っている。

「泊まってく?」
和也の言葉に、『勿論』と答えるとそのままベッドに2人で傾れ込んだ。

「健斗…」

「和也」

キスを交わし、それが合図かのように抱き締め合った。その瞬間―――



ドド―…ンッ!!


物凄い雷の音に身を起こした。

「近くに落ちたかもな」

そう言って視線を和也に戻すと何だか様子が変だ。

「どうした!?」
返事が無い。
雷で驚いて動けないのだろうか。

「安心しろよ。大丈夫だか―…」


「別に怖くねーし。てか暑苦しいんだけど」
抱き締めていた腕の中で聞き覚えのある口調が聞こえて来た。


「ま、まさか…お前」

「刹那だよ。久しぶり」


嘘―…。


「雷が怖かったのか知らねーけど閉じこもっちまったぜ?ガキかって感じだよな」

「出せっ!!和也を出せよ!」

「アンタさ、勘違いしてない?」

「な…に」

「和也は俺が作り出したもう一人の自分。本当の人格は俺なんだぜ?」


は、ははっ。
何言ってるんだコイツは。
和也の方が作り出された人格だと言うのかよ?

笑えねぇ。全く笑えねぇ。



「なのに、コイツは俺の身体を乗っ取って自分のモノにしようとしてやがるっ」

「嘘つくなっ!!お前が乗っ取ってんだろ!」
俺は勢いよく抗議した。


俺は和也の恋人なんだぞ?

和也が乗っ取るだなんて、当たり前じゃないか!
その身体は和也のモノなんだから!



「信じてくれないんだな」

刹那は寂しそうな目で俺を見つめた。

「本当の自分を受け入れてもらえず、もう一人の俺を必要としている」


一体何なんだよっ!!
もう分かんねーよ!



「俺、消えちゃうのかな」

「…刹那?」
ふと、ベッドの下に目をやるとアルバムらしき物が見えた。
気になって手を伸ばし中を見る。


「!!」

そこには小さな頃の和也が撮られていた写真が貼られていた。
しかし、母親が書いたのか写真の下に


『刹那5歳』

と書かれていた。


俺は驚いて顔を上げ刹那を見た。

「懐かしいな。その写真」

「…本当に、刹那なのか?」

「そうだよ。その頃から両親が不在がちになって、よく家で一人でいたんだ。そのせいか内気な和也が俺の中で作り出されたんだ」


俺は持っていたアルバムを床に落とした。
ショックのあまり力が抜けたのだ。


「このままじゃ俺は消される。和也に」

「き…消えるわけないだろ?お前の身体なんだろ?」

「和也が人格や身体を乗っ取っているせいで、中々俺が出て来られなくなってるんだ。だから、もう時間の問題――」


どうしたらいいんだ。
俺は和也が好きなんだぞ?
だけど、身体は刹那のモノ

自分の中にいる人格のせいで本当の自分が消えてしまう。


「俺、結構アンタが好きだったよ」

最後のお別れのような台詞に頭を正気に戻す。

「だけど、和也が好きなんだよな。」

俺は何も言い返せないまま拳を握り締めていた。


「そろそろ和也が出たがってる。」

哀しそうな顔で見る刹那から目線を反らした。
何だか自分まで切なく感じる。


「みんな和也を求めてる。俺は要らない、消えてしまう―…」

ゆっくりと、刹那が手を差しのばした。

「和也を宜しくな」

小さく笑った。


「じゃあな―…健斗」


「おっ、おい!せつ…っ」



























―1年後―




「ねぇ、ホットケーキ食べたいんだけど」

「…分かった」

「シロップいっぱい掛けてね!」

「健斗の甘党は異常だよ」

「何か言った?」

「別に〜。てか健斗にシロップかけて俺が食いたいんだけどな」

「なっ!!このエロガキ!!」

手にはシロップを持ちマジでかけようとしている。

「このまま食べてもイイ?」

「アホかっ!!大学に間に合いだろ!」

ジタバタする俺に跨り、服の上からシロップをかけた。

「テメー何しやがるっ!!」
服がべちょべちょだ!
これでは大学に行けない。

「だいたい、今日が何の日か知ってる?」

「知るかよっ!!じゃなくて退け!着替えないと」

「忘れたの〜?ならお仕置き」
シロップの容器を握り潰すと大量のシロップが溢れ出て俺に注がれる。

「今日は健斗が俺を選んでくれた日じゃん。」


あれから、1年も経ったのか―…。

早いもんだな…。











あの時俺は刹那の手を握り締め抱き寄せた。


『行くなよっ!!』

『アンタ和也が好きなんだろ?だから優しい俺が消えて――』

『バカか!これはお前の身体だろ!お前が消えてどーするんだっ』

『でも、どっちかが消えるんだぜ?』

『だったらお前が残ればいい』

『―…なに言って』

『お前を必要としている奴がココにいる。傍に居てくれ』







『…―ありがとう、健斗』



END

2012 1.21


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