つきにきばをむく 「それしか途がなかった」とは言ってやらない。 もっといい結末も、もっと悪い結末もどちらもあったに違いないのだ。 彼の人は、満足そうに目を閉じてしまったけれど、わたしは少しも納得していない。 満足とはつまり諦めだ。 彼は妥協点を見つけて、結局諦めてしまったのだ。 「おはようございます」 唐突に引き戻された意識。 光を認識した瞼が小さくふるえた。 部屋いっぱいに満たされた朝日は空気をゆるやかにほどいてゆく。 そこでようやく呼吸ができる。物語ははじまる。 「おはようございます」 わたしは、人々は、明日を手に入れた。 そうして目が覚める、学校に行く、仕事をする、手をつなぐ、笑う、歩く、空を見上げる。そんな当たり前のこと。失ったものの代償としてはあまりに小さな幸せ。 そして、何より尊いもの。 長いみちのりを経て、ようやく、手に入れた物語。 それでも「それしか途がなかった」とは言ってやらない。 だって、わたしはこんなにも、お兄様を愛している。 090221 つまりお兄様への反抗期 [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |