[携帯モード] [URL送信]



スペのルビーがセレビィ出した後の話
ルビーと師匠







ここはルネの病院(もちろん個室

清潔感だけが溢れる薄水色の壁が囲む一室。
自殺防止のために開かない大きな窓から檸檬色の光が差し込む。


しゃりしゃり

カナズミから届けられたお見舞いの品の果物の盛り合わせの林檎の皮を剥く音。
あっという間に真っ赤な兎がいくつも出来上がる。


「ハイ、師匠。あーん」
爪楊枝で串刺しにした作り物の兎をミクリの口元に運ぶルビー。

それをそのまま食べようとはせずにギプスをしていない左手で受け取るミクリ。
花の香。きっとルビーがたくさん買ってきた白いユリの花の香だろう。
少し残念そうな弟子の顔を気にせず口を開くミクリ。
ここで食べてしまえば話が有耶無耶になることは必死だ。少し可哀相だが今は受け取るだけに止めておこう。まあ、他の理由もあるけれど。

「では、ルビー。ダイゴやあの、元マグマ団のカガリやあなたのお父上はその、一度死んだのですね」
「ええ、でもボクの元手持ちのセレビィが異なる未来に連れてきてくれたからみんな全快ですよ!」

にこにこと可愛らしい笑顔で再び兎を差し出すルビー。
こちらも再び兎を左手で受け取る。

「では貴方がダイゴを生き返らせて全快にさせた理由を聞きましょう」
「化けて出られたら嫌ですし、看病しろってうるさいのも嫌ですからね」


にこにこ。もう一度差し出す
左手で受け取る。


「ではカガリは?」
「美しい女性が傷つくのは許せませんから」
「それは私も同感です」


再び差し出す。
受け取る。


「貴方のお父上は…聞くまでもありませんね」
「はい、ママを悲しませるわけにはいきませんから」


差し出す。
もう持てない。

ミクリは受け取らなかったし食べもしなかった。
そのかわりにルビーをじっと見つめて口を開く。

最後の問い。


「…では、私は?」
なぜ怪我をしたままなのです?
変な刺激を与えないように、さらさらした絹のヴェールをかけるように訊ねる。

入院するほど重体の自分。
なぜ自分だけ回復してもらえなかったのだろう?
まさか、恨んでいたり殺したいとか思っていたりしないだろうか。

さっきから差し出されていた林檎を食べなかったもう一つの理由だった。



俯くルビー。彼の手には果物ナイフが輝く。
真っ赤な兎。
今は病室に二人きり。
嫌な汗が背中を伝う。



ルビーが顔を上げる。
ナイフが檸檬色を反射して、きらめく。
思わず身構えてしまう。

「…?」


ルビーの頬は軽く赤みが差していた。

「だって…」
ゆっくりと口を開くルビー。
視線はミクリの目ではなく左下に。(林檎兎だ


「師匠の看病ができますし、それに…」



今は師匠、僕だけのものでしょう?


にっこり。
最上の笑顔で再び林檎を口元へ差し出すルビー。


手は空いていない
窓も開かない
助けも来ない

目の前には性悪の林檎色の眼をした美少年。


…泣きたくなってきた










小悪魔ルビー!!











































あきゅろす。
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!