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はらはらと今年初の雪が真っ暗な空からゆっくり落ちてきた。それが私の顔や腕に落ちてきて、隊服にも染み込んで、私の体温を徐々に奪っていく。でも、雪が降っているのに自分が想像しているよりそれほど寒くはない。

確かに体温は奪われているし段々と雪が自分の体に微かに積もっているのに何故だか寒く感じない。自分の感覚がおかしくなったのかとふと頭をよぎったが、そんな事はないだろうと思い、こんな馬鹿みたいな考えをした自分に笑えた。そして、自分で自分を笑っているとバシャバシャと水しぶきが響いてきて、誰かが近づいてくる。

それは速い具合に段々と近づいてきて、私のすぐ側にくると音が消えた。



誰かと思って、閉じかけていた瞼をうっすら開いてみると、見知った隊服、背格好。



「………なんだ、トシ…じゃん」


何故か声を出すのに間が空いてしまった。それに喋るとお腹が痛むし、ピューピューと空気が漏れる。しかも出た声は切れ切れにしか発することが出来ない。

しゃがみ込んで私を見下ろす彼の表情が暗闇のせいで確認出来ない。でも、なんとなく雰囲気で泣いてるのかな?と思って、彼に問いかけたいのに声が出ない。彼に触れたいのに腕が上がらない。

それが疑問に思っても、ただただ彼を見つめているだけ。すると突然、彼が優しく、壊れ物を扱うように私を抱きかかえてくれた。

実は他の隊士たちには知らせていないが私達は一応恋仲な関係。だが、いつもは恥ずかしがって私を抱き締めたり、私が抱きついても仕事だからとすぐに離れてしまうのに…今は、いつもと違って彼から私を抱き締めてくれている。



そう考えるだけで私の頭の中は浮かれている。冷え切ってしまっていた私の体は彼の大きな胸や腕のお陰で暖かさを取り戻したように感じた。でも、それも始めだけでまた体温が低くなっていく。

雪のせいかと思っていたが違うみたい。



いや、みたいじゃなくて本当はわかっていた。なんで、とか、だからッとか、ボソボソと彼の口から聞こえてくる言葉に改めて実感した。





死ぬんじゃねーよ、



私の声が出ないのもお腹が痛いのも全て私が勤務中に彼、トシから離れて何も起きないだろうと気を抜いていたから、攘夷浪士に殺られたのだ。


全部、自業自得。




そんな事を薄れてきた意識の中で思っていると濡れていた隊服の肩に雪以外の水が染み込んできた。それが涙だ、と気づいた頃には私は意識を失った。


(最期に、貴方に言いたかった)
(…ごめんなさい、ありがとうって)





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ななサマお待たせしました〜一応ヒロイン死ネタですけど気に入ってもらえましたかね…?




08.02/23 蓮見凪


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