そうなのかもしれない。
そんなわけにはいかない。
まだ今なら。
selfish faith
休日は大抵昼近くまで布団の中だった。
寝すぎて逆に頭が働かず、今日はどんな予定があったのか、そもそも予定などあったかとまだ布団の上で考える。
そう言えば昨日12時にとか言っていた気もする。
約束の時間と同じく、仮にも彼女なのに名前さえもうろ覚えだった。
「はぁ・・・・・」
溜め息が最初に出てくるということは、もうそうそろ潮時なのかもしれない。
もう少し付き合ってみたら変わるかもしれない。
何でもない会話ももう少し真面目に聞いたら違うのかもしれない。
だけど3週間経っても変わる気配も無かったし、憂鬱になるだけ。
何でもない会話も、シカマルにとっては本当に何でもなかった。
「めんどくせぇな。」
今回の女性はどっちのタイプか。
恨み言を叫びながら、人目があろうがそんなこと関係なく殴られるか。
こうすれば引き止められると思ってでもいるのか、ひたすらシカマルに縋りついて泣くか。
見た目で判断したら裏切られる。
それはこれまでの経験でよくわかっていた。
どっちにしろ最後の台詞は同じで、これで終わることができる。
最初から好きではなかったが、今も同じ。
こう言えば、簡単に次の候補探しに移ることができた。
もう遅刻ぎりぎりの時間だったが、煙草1本ぐらいいいだろうとゆっくり煙を吐き出す。
いつもはまだ吸える長さでも灰皿に押しつぶすくせに、今日は指が熱くなるまで吸ってみる。
山になった吸殻を捨て火がちゃんと消えたのを確認して、煙草と財布だけをポケットに押し込んだ。
机の上にあるチケットは今日は使うことはないだろうから、そのままにしてやっと部屋を出た。
「あの・・・」
今日はどうやらついていたようだった。
あの一見大人しい印象だった女性が、予想を見事に裏切って罵倒してくれたせいで情報が広まった効果か。
私ならどうだと、自信に満ち溢れているのがよくわかる新たな候補が近寄ってきた。
「なら付き合うか?」
「ほんとですか!?あたし、ずっと奈良さんのことが好きだったんです!」
今回はもう無理かもしれない。
化粧の匂いが強くなってすぐそう思ったが、せめて1週間。
予定の変わった夕方までの時間は適当に過ごし。
そして夕方になるとキスだけして、今度はお腹を満たすため帰路に着いた。
以前から良く思われていないことはわかっていたし。
だからと言ってどうだというわけでもなく。
ナルトの家は店のように閉店時間もなく集まるには便利だった。
しかし逆に考えると、潰れるかお開きと誰かが言うまでめんどくさいことを言われ続けるとも言える。
久しぶりに集まった面々が盛り上がる話題はまだシカマルには回ってきそうになかったが、それも時間の問題だろう。
時計がもうすぐ午後22時を指そうとする頃、目の据わったナルトが缶を持ったままシカマルを指差してきた。
「シカマル!親友として言ってやるけど、お前も少し節度ってもんを考えた方がいいってばよ!」
「はぁ?」
たった今、自分がそう思うなら思うようにすればいいとか言っていなかっただろうか。
そうツッコんでやろうかと思ったけど、1人を除いては誰も味方についてくれそうにはなかった。
「よね。あんたこれで何人と付き合った?しかも全部半月ももたずにさよならじゃない。」
「仕方ねぇだろ。試しに付きあってみても、どいつも無理なんだよ。」
「やることやってポイッてことか?最低だぞ、そんなの。」
「やるか。んなことしてたら後々面倒だろうが。」
その辺はこれでもちゃんと考えている。
1つ何かを残せば、余計別れ難くなる。
時間にも余裕があるわけじゃなく、始まりと同じく別れも簡単にしたいというのが信念のようなものだった。
「じゃあ、何もしねぇけど付き合った数だけは多いってことか?」
「まぁな。ま、キスはいのとしてるけどな。」
袋を中心から裂いて置かれている味の種類もたくさんあるチョコの中から、1人呑気にどれにしようかと迷っているいのを横目で見る。
いのの名前が出てみんなの目が一斉にいのに向いたが、すぐシカマルに戻って来た。
そういえばいの以外は知らないことだった。
今更別に言うことじゃなかったかと思ったが後の祭り。
これまで一応付き合ってきたことになる女性も、自分と付き合ってる間、自分とはしないくせにいのとはしていることを知る者はいなかった。
「へぇ、そうなのか・・・・ってなんだよそれ!!」
「ちょっといの!!」
イチゴ味に決めたらしいいのは、少し大きめのチョコを今まさに口に入れようとしているところだった。
振られたのにそのまま口に入れたいのにも、サクラがイラつき始めているのがわかる。
「だって勝手にしてくるのよ、コイツ。昔から何考えてんのかよくわかんないし。」
「・・・・いのちゃん・・・」
ヒナタの方が泣きそうだというのに、いのはというとまだチョコに夢中。
イチゴ以外でどれにしようかと迷っているのが手に取るようにわかる。
決定したのか黄色の包みに手を伸ばすと、サクラが容赦なくその手を引っ叩いた。
「なんだよそれ・・・」
「シカマルはいのと付き合う気はないのか?」
シノだけはサングラスのせいでどんな目でシカマルを見ているかわからないし、口調も態度もいつも通りすぎて何を考えているのかわからない。
「いのか?あぁ、こいつだけは絶対無理だな。」
「失礼なヤツでしょ。」
「わがままだし、うるせぇし。いのは俺の好みとは逆なんだよ。」
「ま、私も彼氏がいるわけじゃないし、18になってもキスもまだってのもやだし。」
「だったら、なんでいのにするの?」
「わがままでうるせぇけど、案外ほんとにめんどくせぇことは言わねぇからな。」
「あんた、その内こんなことばっかり続けてたら、寄って来る子はおろか、自分から寄っても避けられるようになるわよ。」
「それは困るな。」
いのはサクラの目を盗んで、目的のバナナ味を今度は手に取ることに成功していた。
でもシカマルの余裕綽々な態度にますます腹を立てるサクラは気づいてもいない。
もう少し続きそうな説教を聞いているフリをして、今キスしたらバナナかなんて考えているのを誰も気づいてはいなかった。
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