現ぱろ。ちょっとキャラ違う アメリカイタリアドイツ中国インドカナダ。 それとも月や土星やはたまた銀河も越える? さぁどこへ行こう。 小さな旅へ。 チチチ、と鳥の囀りではた、と目を開ける。 締め切ったカーテンは隙間からわずかな光を覗かすだけで部屋は相変わらず夜のまま。 今何時だろう、と寝起きの鈍い頭はぼんやり思う。 鳥の囀りの軽やかさは裏腹になにか嫌な予感がした。 11:02。 デジタル時計の無機質な表示。 「ああああっ!!」 ――君が来る時間を2分も過ぎていた。 一気に覚醒した頭、慌ててベッドを下りカーテンを開く。 シャッと音をたて開かれたカーテンの後ろから飛び込む光の洪水。 小さな夜はいとも簡単に失せた。 そして窓の外に立つ君の姿に僕の血の気も失せた 「ちゅ、中禅寺……」 二階である部屋の窓から寝巻きのままベランダに出て、こっちを見上げる君にへらりと笑ってみる。 君の咎めるような視線、そして呆れた溜息。 「そんなとこでヘラヘラしてる暇があったらはやく準備したまえ。どうせ君のことだからこうなることは予想済みだよ。」 「ありがと……」 どこまでもこちらのことを分かりすぎている彼に感謝しながらも、恥ずかしくてちょっぴり惨めだった。 彼、中禅寺秋彦と僕は、世間で言うところでは恋人というカテゴリーに入る。 中学校から友達というか、人一倍世間で生きにくい僕を嫌そうな態度で、しかし甲斐甲斐しく世話してくれたのが中禅寺その人だった。 高校生になって少しあれ?って思ったけど、やっぱり中禅寺は中禅寺で、榎さんという新しい理解者(主人?)も得たけど、僕らの関係は相も変わらず平行に友人というカテゴリーを進むはずだった。 でもどうしてこうなったんだっけ? はじめてを覚えていない。 気付いたら君が僕に口付けるのが自然になっていた。 ぎゅう、と抱き締められるのは心地よかったし、中禅寺の家に泊まりに行くのも楽しかった、 そしてその先も…… っ……! そこまで考え、僕は思いきりよく顔に水を被った。 何考えてるんだ。恥ずかしい!! 冷たい水が滴るなかでも顔が火照ってるのが分かる。 タオルで拭いて鏡を見るとそこに映ってた顔は、やっぱり真っ赤だ。 「あっつ……」 急がなきゃいけないのに火照りは引いてくれなさそうで。 更に焦り、再び時計に目をやる。 11:10。 もう10分も炎天下の中彼を待たせている。 気付いてもう自棄になった。 顔色のことは忘れて、勢いよく部屋を飛び出す。 これ以上待たせたら何を言われるかたまったもんじゃない。 急いで駐車場まで駆けていき、自転車に寄りかかる彼のもとへ。 今日は暑いぐらいに晴れ渡っていて、燦々と降りしきる初夏の太陽の下に立つ彼は、普段の本を片手に引き込もっている姿は連想させなかった。 「ごめんっ…!」 開口一番、とりあえず謝る。 久しぶりに出掛ける約束。それに遅れたことは鈍い僕でも不味いことだと分かる。 その事を思うとちょっと気まずくて、視線は自然と下がっていく。 怒ってるのではないかと、不安だった。 じっとそんな僕をみていた彼が口を開く。 「……そんな泣きそうな顔をするんじゃないよ。まるで僕が泣かしたみたいじゃないか」 困ったような声がそう言うと、ついっと細い指が僕の顎を捕らえて、顔を上げさせられた。 「まったく君はいつもいつも、間違いなく君が悪いのにこちらが悪いことをしてる気分にばかりさせるね」 泣きそう、と表現された顔に君の顔が近づき、チュッと音をたてて目尻辺りにキスをされた。 只でさえ赤かっただろう顔が更に赤くなった。自分では見えないのだけど。 そうだ、この男は割りと気障なことをするのだ。 見た目なんか当てにならない。 いきなりのことに口をパクパクさせていると 「高々目尻に口付けただけでそんな真っ赤になることないだろう。今更。」 なんて言われる始末。 恥ずかしくてまた目線を降下させた僕を横からにやにやと笑いながら眺めてくる。 くそっ、達が悪い! 「きっ…!君だって、この気持ちいいぐらいの快晴の日の会話とは思えないぐらい、陰湿だよッ!」 それに乗せられて赤くなる自分も悪いのだけれど、精一杯の反撃。たぶん効果はない。 その言葉に中禅寺は打って変わってハハハと快活に笑い、そんな日に昼まで寝ている君に言われたくない、と言いながら自転車にまたがった。 「それならはやく出発しよう。この炎天下の中いたら君は熱中症になりかねないからね。 はやく君も自転車を持ってきたまえ」 弄られ恥ずかしくてムカッとしていたのに、その笑顔を見るとたちどころに許してしまいそうになる自分は本当に弱い。 (だってキラキラしているようなのだもの!) そしてその言葉にはたと気が付く。 「あ……、自転車の鍵部屋に忘れた………」 その言葉に笑顔だった中禅寺は固まり、深い溜息をついた。 そして、無言でスタンドを外すと後ろの荷物置きを指差した。 意味が分からなくてキョトンとしていると、静かに言われる。 「…今日だけだからな。僕は力仕事をしないと決めてるんだから」 嗚呼やっぱり キラキラ キラキラ 輝いてる 初夏の太陽に照らされて ぐらぐらして安定しない荷物置きに注意深く乗り、腕をそっと彼の腰に回す。 普段は自分から進んで触ることなんて少ないけど、思いきって体を背中にくっつけた。 やはり汗をかいていたのかシャツはしっとり濡れていたけど気にならなかった。 ドキドキした。 はじめてのことを思い出せないのだけど、今日と同じぐらいドキドキしたように思う。 「行くよ」 「うん」 …あれ、今日はどこにいくんだっけ? まぁ、 まぁいいや。 君がいればどこまでも。 カシャンとペダルを踏み出す音と共にセミの声が遠くに聞こえた。 夏とトキメキのキラキラ (まだまだこれから!) [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |