それは極楽とも例えられる甘美なる果実
溺れる桃色の。
薄紅色の皮を剥ぎ、中から現れた豊かな果肉に齧り付く。
口に納まり切らなかった汁が顎を伝い、手を伝い、落下した。
口の中に何ともいえない瑞々しい甘味が広がる。
「落ちてるぜ。」
そう云って中禅寺は私の手にべろりと舌を這わせる。
「君は本当にものを食べるのが下手くそだなぁ。」
嗚呼、その様子はたまらなく淫縻。
「君もいるかい?」
口の周りに付いた汁を自らの舌で舐めて、私は尋ねる。
「いいや、これで十分さ」
そう答えながらまたべろりと。
其の行為に笑いが込み上げる。
「なんだい…?」
そう云う君も分かっているくせに。
弧を描く唇が少し憎たらしい。
そのまま口を合わせる。
ほんのり甘い味がしただろう私の唇。
「なんでもないさ。ねぇ京極堂、」
『 ?』
それは甘いあまい桃の媚薬
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