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鋭く光るその眼は何でも見える。
たとえば色付く新緑の葉だとか、広がる遥かな空だとか

夢に満ちてするりするりと背筋を伸ばして歩くの。

この眼はあたしの自慢の眼。

なんだって見えるわ。





猫、見えざるものを




黒い主人はあたしがいつか化けるような猫に
そんな期待をしてる。

でもあたしは未だ奇麗な尾を揺らす猫でありたいの。

くるくる回る、あの人の飽きない表情(かお)に比べて主人は、いつも険しい表情を浮かべるのね。

その二人は誰が見ても似合わない二人よ。

一方が一方にもたれかかった関係(恋仲)なんていつか潰れてしまうでしょう。

でも、あの人も主人も

いやな顔こそすれども、決して離れない、放れることなんてない。


手を繋ぐ、口を合わせる、わずかに垣間見るその融けたような表情を、

理解するには未だ化けないあたしには早すぎるのかしら?


時折困ったように笑いあたしの頭を撫でる主人の優しい手を独り占めにしたいなんて子猫みたいに

我儘いったら叱られる?


まだまだ傍に居たいのですご主人。


いつか主人に恋い焦がれるあの人のように素敵な恋を見つけるまでは。


今日もまたするりするりと背筋を伸ばして歩いてく。

その眼に未だ見ぬものを映して。







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