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また会うのはため息を越えた後



「榎さん」


ギリと音を立てる指の摩擦。離さない、

放すものか。


「手が、痛いんですけど…ねぇ、榎さ、――」

「中禅寺(あいつ)は―――

  お前を見てない」


すとんと肩の力が抜けたように関口は黙り、困ったように笑う。悲しさなんか微塵も見せなかった。


苛ただしくもしもの導きだした回答を、

「それでも、君は…」


遣り切れない其の応(こた)え。

どう仕様もない、

(君は強いだろうか。)



あまりにも哀し過ぎる結末に莫迦な幕引き。




其の畢り(おわり)にすら、





「っ――! 君は莫迦だ!!」




盲目的な愛を注ぐ?




憙、だってコイツの瞳にはもう


アイツしか映ってない。



虚ろな其の眼が捉えるのはもう、アイツだけ。
他のものなど視ることも出来なくなってしまった。
其れは、まるで呪いのような。



「………そんなこと、アイツはもうとっくに知っていますよ」






捉え(捕らえ)られるだろうか。


見ても居ないあの視線を自分だけに?

今更判り切った応えの反芻。
報われはしないのだと何度絶望を辿ったのか。



そうだとしても、






この先の生きる路、己の総てを捨ててさえしても


「これは僕の望みです。そして希望なんです。」




(君の居ない世界など

いらない)







もう、いらない。







花は散る。
美しかった花びらも今は只の塵のように、踏まれ千切れ、汚れてく。
人の気持ちも同等に。



だから、


せめて、


今だけでいいから、








ぬくもりをください。









もう一度

其の声で、







名前を呼んで?




『どうしたんだ、関口君』




中禅寺





「御免なさい

っ――ごめんなさい―……榎さん」





気持ちに嘘を吐くことだけはできないから



笑う?

ねぇこんな自分は、







何を想って生きているのかなど




『僕は君に会いに行く』





止められない




「貴方を好きになれれば良かった…、榎さん」



今に残るのは哀しいため息の音だけで


















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