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誰かが泣いている声がする。
その声は微かだけど確かに聞こえている。





闇に降る雨




ざぁざぁと雨が降っていた。周りを見渡してみるが、やはり姿は見えなくて、泣き声だけ響く。
その声はとても淋しくて、必死に誰かを求めているように聞こえる。





走りだしていた、いつの間にか。
声の主を知りたかった なぜそんなに悲しそうに泣くのと聞いてみたかった。





走って走ってやっと人影を見た。
ぽつんと独りで佇んでいるその人の瞳からは、雨に負けないぐらいの涙が零れていた。

最も何故雨と涙の区別が着くのかと云われたら答えられないのだけど。






『何がそんなに悲しいのですか?』



話し掛けてみるとその人は、ゆっくりと振り返った。


意外と長い睫毛に溜まった涙がたまらなく綺麗だった。





『待ってもこないんだ。もう』


悲しそうな表情のままその人は答える。






『いったい誰を待っているのですか?』


また尋ねる。






『…‥恋人、いや友人かな。』


また悲しそうにその人は答える。






『事情は判らないし、私にこんなことを云えるわけではないのですが、』


じっと悲しそうな瞳がこちらを見る。
また涙が溢れそうだった。




『貴方が泣くと私も悲しいのです。』



ざぁざぁと雨はまだ降り続いている。






『有難う…。』


上手く笑えず少し無理のある笑顔にとても切ない。









貴方と出会った闇の雨。








『御友人の名前は…?』


さっき会ったばかりだというのにこんなことを聞いていいのかと思ったのだけど。




『…×××だよ』


とても悲しそうに云うこの人を堪らなく抱き締めてしまいたい衝動に駆られる。



悲しい顔に私ならこんな顔をさせないと目で云った。




雨足は弱まりそうにもなく唯二人で雨に打たれてる。













あきゅろす。
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