涙の跡が目立っていないかだけ気になって仕方がなかった
世界とひとつになる日
小刻みに電車に揺られる夕暮れ、夕陽に照らされて橙色に染まる世界。
(あんな事をいうつもりじゃなかったのに)
そんな世界に電車は滑り込んで溶ける。
また目元を擦る。それは目を更に赤くするだけとは気付かずに。
(でもあれは榎さんが悪いんだ)
車内に人影は疎ら、規則的に聞こえる音だけが響くそこは酷く静か。
(…‥)
ガタンガタン 窓の外を流れていく風景を眺める。
(もう逢ってくれないかもしれないな)
徐々に車内も赤く染まり、更に世界と溶け合っていた。
それは酷く優しくて懐かしい気持ちになった。
(明日も休みだ)
家々にもぽつりぽつりと灯が灯りだし、妻が待つ家がある街に電車は進んでいく。
(ああ、もう)
くしゃくしゃと頭を掻き回し、自分の膝に突っ伏する。数人の人が電車を降りていった。
(どうしようもないあなただから、)
気付けば乗っているのは一人になっていた。
また窓の外に目をやる。
自然に心が軽くなっていた。
(また逢いにいこう)
降りる駅が近づいていた。
この夕焼けなら明日も晴れる。
(…そして)
ちゃんと謝ってまた笑おう。
降りた駅から街に繋がる、また世界と一つになる。
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