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(ぎ)逆転の法則…ブン太と猫ジャッカル



「行ってきます」
「コラッ、どこ行くんだよ?」

深夜10時過ぎ、身支度整えて家を出ようとする飼い猫のジャッカルを呼び止める。

「どこって・・・いつもの散歩…」
「ハウスっ」
「俺の日課…」
「ジャッカル、ハウスっ!!」

語尾を強め顎で促すと渋々とジャッカルは部屋に戻る。褐色の耳が垂れ下がってスマートな尻尾まで下がりしょんぼりしている。
ジャッカルは賢い犬みたいな猫だ。野良で腹を空かせているところを気まぐれに弁当を分けてやったら、すっげー美味そうに食ったから気にいって連れて帰った。

ジャッカルを無視して台所で夜食を作り出す。
焼肉のタレを付けた豚肉を炒めご飯に乗せて、最後に白ゴマとちぎったノリをふって完成。
豚肉だけど旨そう。冷蔵庫の残り物でこれなら十分な出来だろい。

「ジャッカル、テーブル拭け」

まだ恨めしそうに見つめるジャッカルを促し、テーブルを拭かし夜食を置く。
手を合わしいただきますっと挨拶をして食べる。もちろんジャッカルもそれに続く。

「何でダメなんだよ」

食べながらもジャッカルの抗議は止まらない。ただでさえ箸を持つのが下手で握り箸で食うのに、抗議に気を取られどんぶりの周りにご飯粒が落ちる。
後できっちり落ちたやつも食わせてやる。

「ジャッカルこそ外で何する気だ?発情猫が」
「…っ、春と秋は恋の季節なんだから仕方ねーだろっ!!本能だ」
「万が一にオマエがどこぞの猫にガキ孕まして産まれたら困るんだよ」
「困るって何だよ!?」
「貰い手探すのは大変だろい、俺はこれ以上猫飼う気はねぇからな」

言い聞かせるように念押しして、残りのご飯を掻き込む。

「早く食って寝てしまえ」

性欲なんか腹が満たされれば多少は紛れる。

「のり付けて言っても説得力ねえよ」
「黙れ、馬鹿猫っ!!」

軽くデコを叩き、のりを舌で嘗めとる。左端の唇に付いていた。

「ブン太〜」
「ダメなもんはダメなんだよ」

傍に寄り甘えた声で擦り寄ってくるジャッカルに言い聞かせるが、ジャッカルもしつこく迫ってくる。
聞き分けが悪いジャッカルは珍しい。

「だいたい、行ったところでジャッカル相手にするメス猫なんかいるのかよ?」
「…っ!!」
「痛ってぇっ!!」

ジャッカルの癇に障ったらしく喉元に勢いよく噛み付かれる。明らかにコイツ急所狙いやがった。
反射的にジャッカルを睨みつけ、頭を叩こうと手を挙げるが振り上げた手はジャッカルに押さえ付けられ、床に倒され次は首筋を噛まれる。
座布団替わりにしていたクッションで後頭部の強打は防げたが、噛まれたところはジンジン鈍く痛みが続く。

「っんの…痛っ……!!」

絶対、歯型付いた。必死に身体を捩り暴れるが抵抗したくてもジャッカルの力に反抗出来ず抑えつけられたままガブガブと噛まれる。
猫のくせに犬みたいに噛みやがって…!!

「ジャッカル、ジャッカル…ジャッカル……」

叱るように名を呼ぶがジャッカルの力は緩まない。
いつもだったら俺の言うことは絶対聞くのに今日は言うことを聞かない。
だから宥めるようにジャッカルの名を呼ぶ。宥めるというよりは縋るようにだ。
飼い主の威厳なんか今はない。

「ジャッカル…ジャッカル…」
「………」

噛み付きが止まりジャッカルと目が合う。

「ブン太…」

名前を呼ぶ声がいつもと違う。低い低音。目だっていつもみたいな目じゃねぇ。
たぶんジャッカルの本能にある野性の部分なんだ。

「痛いから離せ…」

ちょっとびくつきながら恐る恐る言えば、腕は押さえ付けられたままだがジャッカルが首筋に擦り寄ってくる。
耳だって少し垂れ下がってきて、噛んだところに唇を這わせなぞられる。
多少は落ち着いたジャッカルなりの謝りなんだろう。

「手…」

もう一度手を離せとうながすと、躊躇いながらもジャッカルが腕を押さえる力を緩める。
腕を持ち上げ、そのままジャッカルを抱き締め頭を撫でる。

(ガッシリしてるなぁ…)

初めて抱きしめたジャッカルは俺なんかよりしっかりした体格で、さっきまで押さえ付けられていた力だって納得してしまう。

「外行きたい…」
「ダーメ…」

まだ諦めねぇのかよ…と、うんざりしてくる。
あの勢いでメス猫とやられたら完璧夏には子猫の貰い手を探さないといけなくなる。

「ブン太…」
「甘える声で言ってもダメなもんはダメなんだよ」

それに…、ジャッカルをどこかその辺のメス猫にくれてやるのは少し勿体ねぇ。

「取り敢えず、俺で我慢しとけい」
「……っ!!」

ジャッカルの頬にキスをしてやる。ついでに唇にも。
キスぐらいだったらやってやる。

「ブン太っ!!」

ぎゅうぅぅっと力いっぱい抱きしめてくるジャッカルを抱き締め返す。

「あっ、待て」
「えっ?」
「キスだけに決まってるだろい」

脱がせようと伸びてきた手を叩く。

「俺で我慢しとけって…」
「主人とやりてぇなら、もっと良い飼い猫になりな」

そう簡単に掘らせてたまるかよ。…っうか、やられるなんて主人の立場なくなっちまっちゃうだろい。
まだ文句を言いたそうな目の訴えに気づき、ジャッカルが口を開く前に唇を塞ぐ。
女の子とキスするのは好きだし、男っていうのは勘弁だけどジャッカルは猫だし可愛いもんだ。
久し振りの誰かとのキスは気持ち良くて繰り返ししてたら、ジャッカルが先に根を上げた。
飼い主に盾突こうなんてジャッカルのくせに生意気なんだよ。


Thanks!!4years old.




あきゅろす。
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